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第67回  ウォルター・ミティとトム少佐 (藤江一博) 2017年4月

「地上よりトム少佐へ ...
      ... トム少佐 聞こえるか?」

トッドに赤いクリップを投げつけられて、妄想癖のあるウォルターはデイドリームから気まずそうに戻ってきます。

 

『酸素の薄い場所へ』:

帰宅してテレビを点けるとニュースではある冒険家が記録を達成したという趣旨で記者会見の模様が放映されていました。

「南谷真鈴(みなみや まりん)」さんが、地球上の七大陸の最高峰すべてを制覇する「エクスプローラーズ・グランドスラム」"Explorers Grand Slam" という快挙を最年少で果たしたニュースです。

グランドスラムの意味である七大陸の最高峰すべては何処を指すのかと調べると、七個ではなくて全部で十個もありました。

 

01.「南極点」" South Pole"(南極大陸)、
02.「北極点」"North Pole"(北極海の氷上)、
03.「エベレスト(チョモランマ)」"Everest, Chomolungma"(ネパールと中国の境)、
04.「キリマンジャロ」"Kilimanjaro"(タンザニア)、
05.「デナリ(マッキンリー)」"Denali, Mount McKinley"(アラスカ)、
06.「アコンカグア」"Aconcagua"(アルゼンチンとチリの境)、
07.「ヴィンソン・マシフ」"Vinson Massif"(南極大陸)、
08.「エルブルス」"Mount Elbrus"(ロシア)、
09.「コジオスコ」"Mount Kosciuszk"(オーストラリア)、
10.「プンチャック・ジャヤ(カルステンツ・ピラミッド)」"Puncak Jaya, Carstensz Pyramid"(インドネシア)

 

地球の上層に位置する十個すべてを踏破するという偉業は日本人初、しかも彼女は二十歳と若く妙齢でそれら全てを実施したスピードに驚かせられます。一年に一個だと十年、半年で一個だとしても五年は掛かる計算です。ですが彼女は約二年間という短期間で達成したらしいのでマッハのスピードで地球を駆け回ったことに驚愕です。
ですが、ニュースで報じられるうら若き乙女が達成したという年齢よりも、心の底にある深い場所に印象強く刻まれたのは記者会見での彼女の発言でした。

 

「地球ってなんて美しいんだろうと感じました。」

 

心に沁みるフレーズが点けたばかりのテレビから流れ出してその音声がまるで「ユーリイ・ガガーリン」(Yuri Gagarin) が語ったとされる台詞を想起させる如くアナログ音声データの値が、テレビ画面に映し出された彼女のあどけない笑顔の画像データがキーとなった連想配列のペアとして一番強調された記憶として脳幹から自動的に永続記憶へと格納されました。

登山といえば、バイト時代の物腰が柔らかくてハンサムな上にとても心根が優しい先輩(井手剛太郎先輩)がかなり以前から登山にご執心されていてアラスカの人跡未踏の地で登山された際に雪原に一人ビバークした「グリズリー(灰色熊)」の恐怖や、あわや滑落しかけて針葉樹の枝を間一髪握って九死に一生を得たことなど、死に掛けた話を吉祥寺の居酒屋で毎度聴かされるのですが、それでも「マッキンリーに行きたい」と念仏のように呟かれます。

片や筆者と言えば、登山といっても高尾山に紅葉を見に行く週末の散歩程度の体力しかないですし、一生のうちで十個の内の一つも制覇出来ないどころか、それに類するような標高千メートルを遥かに越える様な高峰(こうほう)には行かないのだろうとたぶん思います。
先輩が語るマッキンリーの恐怖と魅力の情報が満載されているのにも況して(まして)、きっと肺と心臓が持ちません。

こんな不安を抱かせる程に南谷真鈴さんの発言である「地球ってなんて美しいんだろう」という言葉に大きく反応(妄想)したのは、ここ最近では毎日観ている映画があったからです。

 

『LIFE!/ライフ』:

「LIFE!/ライフ」"The Secret Life of Walter Mitty" は、監督、製作、主演の三役を務める「ベン・スティラー」(Ben Stiller) (2013年公開)の米国映画です。原作となる短編小説は風刺好きな作家で漫画家でもある「ジェームズ・サーバー」(James Thurber)による「ウォルター・ミティの秘密の生活」"The Secret Life of Walter Mitty" があるでそうでして(未読ですが)、この短編をベースにコメディー作品「虹を掴む男」"The Secret Life of Walter Mitty"(1947年公開)として既に映画化されています。本作は一応リメイク作品とはなるのですが、「LIFE!(ライフ)」題された本作は前作とは全く趣の異なる映画となっています。)
監督、製作、主演が「ベン・スティラー」(Ben Stiller) だと来れば(筆者は当然)「ズーランダー」"Zoolander" テイストを期待されると思いますが、それとも全く違いますのでご視聴を希望される場合にはご注意が必要です。

グラフ雑誌の出版会社でネガティブ(写真のネガフィルム)の管理という文字通り陰ながら地道に勤勉に働くウォルターは時折夢想に耽る癖があるのですが、雑誌会社の終焉と仕事で追い込まれた彼は慕情を寄せる異性の言葉と妄想に背中を後押しされて冒険の旅に出ることになります。探し物を求めて行きたいところへ行くことが出来るのです。この物語は誰にとっても何某かの琴線に触れることとなる叙情的な「何か(真髄)」を確かに感じることでしょう。

主役の夢想家で口下手の「ウォルター・ミティ」"Walter Mitty" は「ベン・スティラー」(Ben Stiller) が「強くて小さい男」"Rajqawees means strong little man" を演じて全編通して世界中を駆け抜けます。

彼が密かに慕情を寄せる相手役の「シェリル・メルホフ」"Cheryl Melhoff" には「クリステン・ウィグ」(Kristen Wiig) が配役されています。ウォルターの夢の中でもシェリルは活躍していてグリーンランドの田舎町のバーでアコギ片手に「デヴィッド・ボウイ」(David Bowie) の名曲「スペース・オディティ」"Space Oddity" を唄い彼の背中を押して勇気を奮い立たせます。

ウォルターが世界中を探し回る切欠となる逢ったことのない仕事のパートナー、カメラマンの「ショーン・オコンネル」"Sean O'Connell" 役は「ショーン・ペン」(Sean Penn) が努めます。ショーンはウォルターが捜し求めるゴール地点の「旗」としての役割をごく自然に演じるその存在感は圧倒的で絶大です。ウォルターとのツーショットのシーンは見所で台詞が沁みて、ショーン・ペンが登場するシーンで思わずカッコイイと唸ってしまいます。しかも、佇んで映っているだけでカッコイイのです。困ったものです。

ウォルターの母親「エドナ・ミティ」"Edna Mitty" には往年の名女優「シャーリー・マクレーン」(Shirley MacLaine) 。ショーン・ペンと同等かそれ以上に彼女が画面に映るだけで優しく庇護されている感覚に陥ります。「シャーリー・マクレーン」とくれば「ジャック・レモン」(Jack Lemmon) と競演した「アパートの鍵貸します」"The Apartment" をすぐさま想い出しますが若き頃と変わらず彼女の妖精ぶりは健在で、母親役である筈なのですが天使のような奔放さと捨てた筈の探し物を鞄から取り出すというミラクルを劇中でも遺憾なく発揮しています。それに誰もが美味しいと笑顔になる彼女の手作り「クレメンタインケーキ」"Clementine Cake" にはいっぱいの愛情が篭っていると納得させてくれるのも彼女のお陰です。そしてウォルターに最後まで仕事をやり遂げなさいとまるでマリア様のようにエールを送ってくれるのです。

ウォルターがシェリルに近づくために登録した出会い系サイト「イー・ハーモニー」 "eHarmony" のカスタマーサービス担当をする「トッド・マハール」"Todd Maher" を「パットン・オズワルト」(Patton Oswalt) が演じます。トッドはウォルターと電話で会話するだけ出演ですが声だけで彼の人柄が良いのを感じますが、その彼が物語後半に突然登場すると愛嬌のある演技でぐっと和ませてくれます。トッドの出演が、良い人には良い人を近づけてくれるのだと思わせてくれるのです。ロサンゼルスではじめて顔を合わせたトッドはウォルターを当然サエない男とイメージしていたのですが、ウォルターを見て「インディアナ・ジョーンズ」"Indiana Jones, Jr." がロックバンド「ストロークス」 "The Strokes" のボーカルに転身したかのようだと照れて告白します。二人が空港のロビーで長年の友人のように仲良く話しながら食べるシナボンのフロスティはとてもヤバくてとても美味しそうです。

「キャスリン・ハーン」"Kathryn Hahn" 演じるまっすぐで素直なウォルターの妹「オデッサ・ミティ」"Odessa Mitty" は「グリース」"Grease" の「リゾ」"Rizzo" 役を得るのですが、兄さんの誕生日を無邪気に喜んで懐かしのおもちゃ「ストレッチ・アームストロング」"Stretch Armstrong" をプレゼントし、亡くなった親父さんの形見でもある思い出のピアノを売却する時には泣く喜怒哀楽が明確な様は、まさにリゾそのままのタフで優しいその素直さに自然に好感を持ちます。

忘れてならないのは会社を再編するためにやってきた馬鹿で嫌な新しい上司として「テッド・ヘンドリックス」"Ted Hendricks" を演じる「アダム・スコット」"Adam Scott" です。妄想の中で「スパーダーマン対シルバー・サーファー」"Spiderman vs Silver Surfer" を彷彿とさせるマーベルのアクションヒーロー格闘シーンを摩天楼で繰り広げます。物語の最後の最後まで、立派な髭だけでなく小粒な山椒として味付けしてくれます。

へべれけに酔っ払ったヘリコプターのパイロットは、「オラフル・ダッリ・オラフソン」"Olafur Darri Olafsson" 、ウォルターの同僚「ヘルナンド」"Hernando" には「アドリアン・マルティネス」"Adrian Martinez" の二人がこれまた愛嬌を振り撒いて物語に強弱を与えてくれます。

キャスティングの勝利ですが、登場人物が皆とても魅力的なのです。

 

『極彩色と絶景とタイポグラフィ』:

もう一つこの映画を何度も観ている理由はシンプルで映し出される画が鮮やかでとても綺麗なのです。

画面に映し出される色のトーンが自然の原色が際立って映える色鮮やかな景色を堪能できます。自然の絶景の中に登場人物とタイポグラフィがデザインされていて動く上質の写真集を眺めている感覚に陥ります。あたかもクレジットカード会社(プライスレスというキャッチコピー)のコマーシャルが二時間続く様なテイストの映画とも擬えることが出来るかもしれません。何よりも惹かれるのは物語にどっぷり漬かれます、醗酵して醸造出来る程に醸すのです。

この絶景の写真に音楽で見るものの感情に揺さぶりを掛けます。

サウンドトラックが映像とすごくマッチしていてスウェーデンの「ホセ・ゴンザレス」"Jose Gonzalez" や彼のサイドプロジェクトであるユニット「ジュニップ」"Junip" などを中心にOSTが構成されています。通勤中にサウンドトラックを聴いているとウォルターがスケボーで滑走するシーンが自然と浮かび上がります。

同じく劇中歌として楽曲自体がストーリーと深く関わる選曲には良く見知った名曲がずらりと並びます。

 

「スペース・オディティ」"Space Oddity" /「デヴィッド・ボウイ」(David Bowie)
「マン・イーター」"Maneater" /「ダリル・ホール&ジョン・オーツ」(Daryl Hall & John Oates)
「愛の残り火」"Don't You Want Me" /「ヒューマン・リーグ」(The Human League)
「夢の夢」"#9 Dream" /「ジョン・レノン」(John Lennon)
「ダーティ・ポーズ 」"Dirty Paws" /「オブ・モンスターズ・アンド・メン」(Of Monsters And Men)
「エスケープ(ピニャ・コラーダ・ソング)」"Escape (The Pina Colada song)" /「ルパート・ホームズ」(Rupert Holmes)

 

OST "Original Sound Track" での「エスケープ(ピニャ・コラーダ・ソング)」"Escape (The Pina Colada Song)" は「ジャック・ジョンソン」(Jack Johnson) がカバーしていてゴージャスなアサインに驚きます。

劇中での冒険ではウォルターが漁船でグリーンランドからアイスランドに行ってショーンを探しますが、そのシーンの挿入歌で流れる「ダーティ・ポーズ 」"Dirty Paws" は「オブ・モンスターズ・アンド・メン」(Of Monsters And Men) のファーストアルバム "My Head Is an Animal" からの楽曲で歌詞が独特です。アイスランドという過酷な環境で戦い続ける生き物たちの日常を唄っているのですが、そんなフォークロックを歌う彼らがアイスランド出身で映し出される美しい山並みとリンクします。

エレベーターのシーンで「マン・イーター」、カラオケパブで「愛の残り火」といったストーリーの要所で聴きなれた楽曲を聴くと懐かしさがこみ上げますが、何と言っても「スペース・オディティ」"Space Oddity" という楽曲自体がストーリーの骨格に深く関わっています。
物語のキーとなるシーンで、極北にある場末のカラオケパブでシェリル・メルホフがギター一本でウォルターの勇気を振り絞るために歌いますが、OST でもクリステン・ウィグとデヴィッド・ボウイが競演したバージョンが収録されていました。

筆者既に何十回と飽きることなく毎日観続けている理由は音楽と映像と物語とが醸し出す気持ちが揺れ動く繊細なハーモニーに共鳴して何故か心が落ち着くのです。

 

『二十五番のネガティブ』:

冒険へと狩り出されてしまう直接的な切欠は、ウォルターの窮地から始まります。 キーワードは、「二十五番のネガティブ」です。

ライフ誌の最終号の表紙となる筈の二十五番のネガティブがどこにも無いのです。同僚のヘルナンドがまだショーンが持っているかもしれないと話し掛けます。ウォルターは貴重な「二十五番のネガティブ」を何としても探し出さなければならないのです。

ウォルターがフィルムの贈り主であるフォト・ジャーナリストの「ショーン・オコンネル」"Sean O'Connell" が中央に写っている壁に貼り付けてある白黒写真をじっと眺めていると写真の中のショーン動き出します。写真の中のショーンがウォルターを見つめて手招きしているのです。

灰色の上着(作業着)と「ゼロハリ(ゼロハリバートン)」"ZERO HALLIBURTON" のアタッシュケースを掴んで、仕事場の写真現像用暗室を飛び出します。

同時に「アーケイド・ファイア」"Arcade Fire" の「ウェイク・アップ」"Wake Up" が流れ出して、グリーンランドへ向かう空港や飛行機の機中にLIFE誌の標語(モットー、スローガン)が映像に文字が組み込まれます。

長い間、十七歳の誕生日に旅立つ筈であった頃から螺子(ネジ)を巻き続けていたウォルターの歯車が回り始めてとうとう彼の体躯を突き動かしたのです。

「財布の中を見て」。

未知の世界へと飛び出す勇気をくれたのは、シェリルと交わした会話が根底にあった筈です。

 

『地上よりトム少佐へ』:

       "Ground Control to Major Tom ...
     ... Can you hear me, Major Tom?"

公園での別れ際にシェリルがウォルターに言います。

「そういえば"トム少佐"の歌だけど、未知の世界に行く勇気を讃えているの、いい歌よ。」

ショーンを探すことを決心してウォルターが飛び出て舞い降りた最初の到着地は、「グリーンランド」"Greenland" の「ヌーク」"Nuuk" という何も無い港街でした。ショーンを探す手掛りを求めて場末のカラオケパブに入ると彼女にフラれた悲哀を聴いてくれと「ヒューマン・リーグ」(The Human League) のヒット曲「愛の残り火」"Don't You Want Me" を唄って見知らぬウォルターに絡み出した彼がヘリコプターのパイロットでした。

ショーンが乗った筈の漁船に行くためには、そのへべれけに酔っ払ったパイロットが操縦するヘリコプターに乗るしか方法がないのですが、乗るべきか否かを迷った時に、
未知の世界に旅立つ勇気、その勇気を奮い立たせてくれるように「スペース・オディティ」"Space Oddity" を応援歌としてグリーンランドのカラオケパブで歌ってくれたのは夢の中のシェリルでした。

臆病だと恥じる必要はないのです。誰かの応援や助けがあって勇気を振り絞ってやっと前に一歩踏み出せることが出来るように思えます。

 

『幽霊猫 ユキヒョウ』:

冒険から戻ったものの探し物を見つけられず、十六年勤務した会社も首になり、彼女への淡い想いを適える可能性も潰えてしまい落胆しきって戻った自宅で二十五番のネガティブの手掛りに出会います。フォト・ジャーナリストとして世界中を飛び回る根無し草ショーンのメモ書きの最後のピースとなる見知らぬ単語はエドナに教えて貰った「部族軍長」"Warlods" だったことを知り、ショーンを探しにアフガニスタンに聳え立つヒマラヤの高地へと向かいます。

過酷な雪山を経て最後には独りでショーンの居場所を捜し求めるのです。
遂に見つけたショーンは高山の尾根に現れると言う幻の「雪豹(ユキヒョウ)」"Snow leopard" の写真を撮りにきたのでした。ですがそのユキヒョウは「幽霊猫(ゴーストキャット)」"Ghost Cat" と呼ばれているほど、滅多に姿を見せないのだと教えてくれます。

 

「美しいものは注目を嫌う」"Beautiful things don't ask for attention"

 

ショーン曰く上記だという事だそうですが、ウォルターが肝心の二十五番のネガティブの行方を尋ねると、プレゼントした財布に入れておいたというのです。ショーンに因れば財布は入れ物でプレゼントはその中に入れておいた「二十五番のネガティブ」だったのだと言います。
ですが、その財布はウォルターが気落ちした時にすでに自宅で捨ててしまっていたのです。そんな二人の会話中にその「幽霊猫」が姿を現します。ですが彼は何故かカメラのシャッターを切りません。

 

「ただ、そこにとどまりたい」"I just want to stay in it"

 

自分にとって大好きな時間はカメラに邪魔されたくないんだと語ったあとに、ショーンは "Stay in it" とそう呟いて恍惚の表情を見せます。その瞬間を感じることが生きることなのだと自然体の表情がそんな台詞を物語っています。

ユキヒョウがどこかに消えてしまった後、ウォルターは何の写真だったのか教えてくれとショーンに尋ねますが、ショーンはその答えとして「二十五番のネガティブ」は「幽霊猫(ゴーストキャット)」"Ghost Cat" だなと素敵な笑顔ではぐらかします。

 

『シナボン』:

物語の冒頭から「イー・ハーモニー」"eHarmony" というインターネット・マッチングサイトのカスタマーサービスでウォルターの面倒を見てくれるのは、トッド・マハールでした。電話越しで声だけの出演ですが、ウォルターの冒険を逐次サイトのプロフィールに書いてくれるのです。

声を聴くだけで分かるほどトッドは愛嬌のある優しい人物ですが、空港で不審者として拘留されて窮地に立ったウォルターはトッドに助けを求めます。十七時間牢屋に拘束された後にお陰で釈放されたウォルターを迎えたトッドは会うなり「ビッグ・ハグ」"big hug" をしてドーナツ屋さんの「シナボン」"Cinnabon" へ誘います。初対面の二人が空港のロビーで長年の友人のように仲良く歓談している様子には心洗われます。

こういう親切な人達に助けられて日々生きていることを改めて思い起こされます。

 

『人生の真髄』:

LIFE誌の標語(モットー、スローガン)でショーンがウォルターにプレゼントした革の財布に刻印した言葉が劇中に何度か登場します。

"To see the world, things dangerous to come to, to see behind walls, to draw closer, to find each other and to feel. That is the purpose of life."

「世界を見よ。危険に立ち向かえ。壁の裏側を見よ。もっと近づいて、お互いを知れ。それが人生の目的なのだから。」

この言葉が後押しになり主人公が遅まきながら旅立つことで物語が転がり始めましたが、この標語が書かれた財布の中に「二十五番のネガティブ」が入っていたことを知らずに、ウォルターは失念の内にショーンからプレゼントされた財布を捨ててしまっていたのでした。

ですが幸運な事に救世主エドナが捨てられた財布を拾ってくれていたのです。ショーンがその中にそっと忍ばせておいた「二十五番のネガティブ」をウォルターは遂に手にします。

最終号の表紙になるべき「二十五番のネガティブ」を持ち、改装中のライフ社屋で会議中のテッドに「これがクインテサンス(真髄)」だと渡します。そして彼にライフ誌のモットーを知っているかと訊ねるのです。
マクドナルドのキャッチフレーズを答えるテッドに、ライフ誌のこの標語を信じて守り抜いてきた社員の代表として彼に苦言を呈します、「嫌な奴にはなるな」と。

ショーン曰く、ライフ誌最終号の表紙に相応しいのは「二十五番のネガティブ」であり、自身の最高傑作なのだと語ります。
この写真が「人生の真髄」"the quintessence of life" 。
その意味はラストシーンで私たちにも分かりました。

 

『勤勉と友情』:

映画タイトルの文字が出る前の物語の始まりでインターネット・マッチングサイト「イー・ハーモニー」"eHarmony" のシェリルのプロフィールには好みのタイプで "Adventurous, Brave, Creative, (or Employed)" 「冒険好き、勇敢、クリエイティブ(雇用されている人)」が書かれていました。

映画冒頭のシーンではウォルターは通勤電車を待つ間に夢想して彼女にABCをアピールします。探し物である「二十五番のネガティブ」を追ってストーリーが展開するとウォルターは現実世界でも "ABC" をクリアしてことになりますが、物語終盤になって "ABC" の次の "D" (Diligence)「勤勉さ」が尊いことを改めて想い出させてくれるでしょう。
ショーンがパートナーとしてウォルターを信頼したのは、その "D" 「勤勉」に他ならないからです。

それと、"E" の次の "F" (Friendship)「友情」が彼を冒険の旅に導いてくれて勇気を与えてくれて窮地を助けてくれたのです。ABC (or E) も良いのですが、隠れて普段は見え辛いかもしれない "D and F" がとても大事だと気づかせてくれます。

当たり前の事かもしれませんが、日常の勤勉さと友人を大切にしなければと思います。

 

「探し物は何ですか?」:

お気づきかもしれませんが、毎日この映画を鑑賞している筆者は相当に感化されています。
ウォルター・ミティと同じ様に平凡で夢想壁を持つ筆者は勤勉な彼の真似をしたいと切に想いましたので、まずは恒例通りに形から入る自己満足のためにグッズを取り揃えたいと考えました。

勤勉さと裏方の象徴的な灰色の作業着(ジャケット)"Grey Work Jacket" (どうやら映画用に作ったカスタムメイドらしいのです。未確認ですが口コミ情報に因れば、GAP や J. C Pennyで似たようなジャケットが売っていたそうです。) 浮き輪とサメ避けに活躍した「ゼロハリバートン」"ZERO HALLIBURTON" の「スリムアタッシュケース」"Slim Attaches" 妹からの誕生日プレゼントとして受け取り白昼夢で活躍した後、現実でも移動手段となったスケボーへと物々交換に役立った懐古フィギュア「ストレッチ・アームストロング」"Stretch Armstrong" ショーン・オコンネルから贈られた LIFE 誌の社訓が刻印された手造りの「革財布」"Handmade Leather Wallet"

映画の中で特にシンボル的な役割を果たした小道具としての「革財布」ですが、クリエイティブな人達がハンドメイド製品を販売する "Etsy" 「エッツィー」というサイトでショーンがプレゼントした革の財布を手作りされている方を見つけました。ハンドメイドされている米国のソルトレイクに在住のカスタマイズのお願いメールしてみると「追加料金なしで出来るよ」、「二、三週間かかるよ」と簡潔な返事があって、その返信の返しで筆者の映画への思いの丈を書き綴りましたが、返信はまだありません。どうやらいつもの様に重すぎてやりすぎたかもしれませんが、これが吉と出るか凶と出るか数週間後が楽しみです。

好きなものに型から入るという恒例の禊(みそぎ)という悪習なのではありますが、まだ未入手のものばかりですし、「物」に固執すると本質を見失ってしまうのでなるべく欲しいという物欲を抑えて、「勤勉」という習性と「未知に挑戦する」という精神性を真似できるように転化していければと思います。何よりもそれが高じて新しい世界に向かって旅立つ方と残って居場所を守り続ける方の双方を祝福して応援できればと考えます。
仲間達にエールを送ることが出来る様な独り応援団になれれば最高です。

そして応援を頑張るのと同時にショーンの格言にあった様に、目の前で起こるその瞬間を感じてただそこに留まりたいと思うのです。今を楽しむのです。

探している物は身近にあるはずです。

 

次回もお楽しみに。

 


 

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