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第61回 オープンソースでNFVを実装する「OPNFV」の活動(パート1) (中井悦司) 2015年2月

はじめに

 今回から数回に分けて、OPNFV(Open Platform for NFV)の活動を紹介したいと思います。OPNFVは、NFVを実現するソフトウェア環境の実装を目指したオープンソースプロジェクトです。ただし、すべてのコンポーネントをスクラッチで新規実装するというわけではなく、OpenStackやOpenDaylightなど、既存のオープンソースプロジェクトと連携しながら、各種オープンソースの機能拡張とインテグレーションによって、NFVを実現するという方針を採用しています。

 今回は、OPNFVが実装を目指す「NFVアーキテクチャー」の全体像を紹介します。

NFVアーキテクチャーの概要

 ところで、みなさんは「NFV」とは何だったか覚えているでしょうか? 本コラム第53回の冒頭では、次のように説明しました。

 ―― NFV(Network Function Virtualization)は、欧州電気通信標準化機構(ETSI:ヨーロッパの電気通信全般に関わる標準化組織)が提唱する取り組みで、専用のアプライアンス機器で提供されていたネットワーク機器をIAサーバー上の仮想マシンで動作する、仮想アプライアンスに置き換えようというものです。

 LTEの無線通信を支える通信装置など、通信キャリア向けのネットワーク機器は、これまで専用のアプライアンス機器で提供されていました。ここからソフトウェアだけを取り出して、仮想マシンで利用できるにしようというわけです。

 この際、仮想マシンの実行環境として、OpenStackのようなIaaS型のクラウド基盤を利用すると、外部のソフトウェアを利用して環境構築の自動化ができるようになります。つまり、ネットワーク機能を提供する仮想マシンの起動からはじまり、仮想マシン内部で起動したソフトウェアの設定、その他の関連業務システムとの連携など、新たなネットワークサービスの立ち上げ全体を自動化できるとの期待があります。ETSIが定義する「NFVのアーキテクチャー」では、このようなサービス環境構築のためのソフトウェアを含めた形で、NFVの全体像が定義されています(図1)。

fig01

図1 NFVアーキテクチャーの概要

 NFVのアーキテクチャーというと、ETSI公式のホワイトペーパーが有名ですが、「NFVI」「VNF」「MANO」など、謎の略語が満載で、頭の中が「?」でいっぱいになります。しかしながら、前述の目的が分かれば、それほど複雑なものではないと気が付きます。謎の略語でいかにもすごそうに見せるのは、IT業界の常套手段です(笑)。

OPNFVの目標

 図1を見ながら、おもな略語を解説しておきましょう。まず「NFVI = NFV Infrastructure」は、NFV用の仮想マシンを実行するための仮想化基盤です。OPNFVでは、OpenStackを利用してNFVIを実現することを目指しています。そして「VNF = Virtualized Network Function」は、ネットワーク機能を提供するソフトウェアです。これまで専用アプライアンスで提供されていたソフトウェアが、NFVI上に起動した仮想マシンの中で実行されます。「OSS/BSS = Operation Support System/Business Support System」は、キャリアネットワークの世界では昔から使われていた用語で、ネットワークサービスをエンドユーザーに提供するための各種業務システムを表します。

 そして、これらを外部からコントロールするソフトウェアが「MANO = Management and Network Orchestration」です。NFVI/VFN/OSS/BSSのそれぞれが公開するAPIに制御命令を送信して、仮想マシンの起動、VNFソフトウェアの設定、BSS/OSSへのサービス登録など、新たなネットワークサービスの立ち上げに必要な処理をまとめて行います。図1では省略していますが、MANOの内部には、NFVIを制御する「VIM = Virtualized Infrastructure Manager」、VNFソフトウェアの設定を行う「VNFM = VNF Manager」など、さらに個別のコンポーネントが用意されています。

 ただし、これらはあくまでNFVを実現するアーキテクチャーの「構想図」です。オープンソースを利用して、これらのコンポーネントを実装することがOPNFVの大きなゴールとなります。公式WebサイトのAboutページによると、まずは、図1の「NFVI」の実装にフォーカスして活動を進めています。この部分では、OpenStackに対して、VNF/MANOから必要とされる機能の追加やAPIの整備を進めています(*1) 。このような採用技術の選定は、TSC(Technical Steering Committee)と呼ばれる会議体のメンバーが行います。

次回予告

 今回は、NFVの復習とOPNFVの活動方針について紹介しました。現在は、OpenStackをベースにして、VNFソフトウェアの実行基盤となるクラウド基盤の実装を進めているわけですが、当然ながら、OpenStackの開発コミュニティとの連携が必要となります。OPNFVでは、OpenStackに独自の機能を追加するのではなく、あくまでもOpenStackの標準機能として、NFVに必要な機能拡張を進めることを目指しています。次回は、OPNFVとOpenStackコミュニティとの関わりについて紹介したいと思います。

参考資料

(*1) 「OPNFV - Technical Overview

 

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