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第22回 エンジニアと学び (2) コワーキングスペース 多機能型店舗 Junction 取材記 (濱田康貴) 2019年9月

みなさんこんにちは。先日、オープンソースカンファレンス2019 Hokkaido(以下OSC)へ参加したのですが、懇親会の席上で、ある青年から「濱田さん、恵庭に面白いコワーキングスペースがあるんですよ。行ってみませんか?」と誘われ、話を聞くととても不思議なお店でしたので、北海道滞在日程を変更して訪問することにしました。先ほどの青年のお話によると、

  • コワーキングスペースの利用料としてお金を取られることがない
  • お店の中にはドラムセットやギターアンプなどがあり、好き勝手にセッションが始まる
  • 大人だけでなく、子供も好きな時間に訪れて勉強やプログラミングをしている

しかもこれらが同時多発的に行われることもあるそうで、これまで持っていたコワーキングスペースの概念を大きく超える現象に、俄然興味を持ったのです。

Junctionをはじめたキッカケを聞いてみた

札幌と千歳、苫小牧を結ぶJR千歳線 島松駅を降り、Junctionへ向かう。いわゆるビルの一室にあるコワーキングスペースとは異なり、洒落たレストランといった外観である。

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Junctionに入ると、OSCで出会った青年がプログラミングをしている。周囲を見渡すと、ギターを爪弾きながら歩く人、絵を描いている人、学校の宿題をしている子供、プログラミングをしている子供など、様々な活動をしている人たちがいる。

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Junction 運営メンバーの1人、大杉氏に話を聞いてみる。

濱田「Junctionはいつ頃始められたのか。どういったサービスを提供しているのか。」

大杉「今年(2019年)の5月にオープンした。コワーキングスペースというよりも、多目的 目的を限定しないワークスペースとして始めた。ご覧の通り、PCを持ち込んでの作業もできれば、楽器演奏もでき、食事も提供している。しかも、シェアキッチンとして調理場を貸し出したりもしている。」

濱田「どういった方が運営しているのか。」

大杉「代表の西川がもともと音楽スタジオを別の場所で経営しており、私はもともと内地でプログラマーをしていた。今はここでCoderDojo Eniwa(コーダー道場 恵庭)のメンターをしている。総勢20名ほど、様々なバックグラウンドを持つメンバーが集まり、内装工事なども自分たちで施工した。他にも、楽器やアクセサリを販売するメンバーもいる。月々の賃料は事業主らで頭割りして、若い人たちも小さなリスクで事業を始めやすいようにしている。」

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子供も大人も思い思いの時間を過ごしている

ここで店内を一周して見せていただく。キッチンは洋菓子店のような内装でお洒落である。ギターやベースといった楽器のほか、ハンドメイドの香水なども扱っている。香水を販売している方は、大学卒業後に起業したそうだ。

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2Fへ上がると、かなり広い作業スペースがワンフロアを占めている。ここで、ギター・ベースのシールドケーブルを箱詰めしている。「このケーブルを束ねる革のバンドも、ここで手作りしているんですよ」と大杉氏が説明してくれる。

ここで1つ気になることを聞いてみた。

濱田「ところで、Junctionはアンプやドラムセットもあって、(人家が少ないので)近所を気にせず音を出せる。しかし仕事や勉強をしている人も同じフロアにいてお互いまったく気にしていなさそうだが。(実際1Fはそんな雰囲気だった)」

大杉「その通り。あまり演奏が盛り上がっていなければ、だいたいはお互いが気にしない。それに、ここでは音を出さない方が自発的に2Fへ上がってくるというコンセンサスができている。」

特にルールで縛っているわけではないのに、こうした棲み分けができていることに驚いた。1Fへ戻ると、先ほどの青年が「濱田さん!今ゲーム作っているのですが、絵を描いていただける方がいなくて・・・という話をしたら、こちらの方に描いていただけることになりました!」と話してくれた。先ほどから鉛筆でスケッチをしていた方だ。
やがて、彼の隣でゲームプログラミングをしていた小学生に、母親の迎えがきた。なんと、据え付けだとばかり思っていたデスクトップPCは、母親が車で持参してきたという。聞くと、お子さんは放課後から夕食までの間Junctionでディスプレイだけ借りて勉強やプログラミングをしているという。母親は大人の目があるというだけでも安心だが、勉強やプログラミングの相談に乗ってもらえるという点が非常に有り難いと、親子が口を揃える。
大杉氏によると、放課後の活動だけでなく、不登校の子が日中Junctionで自習したりしていることもあるという。

気になる疑問をぶつけてみた

Junction訪問前から、自由な雰囲気であることは想像していたが、想像以上にGiverの集まりであり、陳腐な言葉であるが、そこには"善"のオーラが満ちている。そこには明文化されたルールもなければ、いわゆる"空気を読め"といった排他的な空気は微塵も感じられない。なのに、そこにいる大人も子供も皆のびのびとしている。この理由が知りたくて、気になる疑問をぶつけてみた。

濱田「Junctionの魅力はとてもよく伝わった。しかし、これだけの取り組みを他の地域 例えば東京でやろうとすると、まず上手くいくという想像ができない。ストレートに言うと、善意にフリーライドしようとする輩が大切な場を食いつぶしてしまうのではないかと不安になる。」

大杉「確かに、東京では成立しにくいモデルだと思う。先ほど申し上げた通り、様々なバックグラウンドを持つメンバーが自分たちでできることを持ち寄って運営している。ここではCoderDojo Eniwaのワークショップも開かれているが、できる子はメンターになって子供たちどうしでプログラミングを教えたりもしている。協業しようと見学に来る企業もいるが、今のところ幸い濱田さんが懸念しているようなフリーライダーはいない。」

濱田「皆さんの取り組み方はわかった。フリーライダーを追い返そうと思うと、自ずと排他的な空気になるものだと思っていたが、見渡す限りそんなことをしそうな人は1人もいない。このスタイルの運営で続いている理由は何か。」

大杉「一言で言うならば、"覚悟の持ち寄り"ができているからだと思う。」

なるほど・・・この一言ですべての合点がいった。さらに大杉氏は続けて

大杉「我々はすべての人を歓迎する。勿論きっとフリーライドしたいと思って来る人もいるかも知れない。しかし、この"覚悟の持ち寄り"が自然と空気になっているので、いわゆるフリーライダーが2度来ることはないのではないか。」

と分析する。

今後Junctionがどうあって欲しいかを聞くと

大杉「とにかく、Junctionを持続させたい。多様な人々が交わり合う、まさにジャンクションとして持続させたい。」

と、静かに、しかし今まで以上に熱を込めて語る。

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おまけ (美味しいお蕎麦、ベースとドラムのセッション)

ひとしきりインタビューが終わった後、大杉氏が毎朝粉から挽いて打っているという自家製のお蕎麦をいただく。

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まずは汁につけずコシのあるお蕎麦を一口含むと香りが口いっぱいに広がる。Junctionに訪れたら是非味わっていただきたい。

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さて、この日ものすごく気になっていたのが、こちらの楽器群である。練習にもライヴにも利用できるこのスペース、折角の機会なので演奏させていただくことにした。

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気がつけば、ジャムセッションが始まった。

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こうして恵庭の熱い夜が更ける。誰もが自然体で思い思いの時間を過ごすことができる、Junction。コワーキングスペースの枠を超え、地域に開かれたコミュニケーションスペースとして、末永く持続して欲しいと願わずにはいられない。

文中敬称略

恵庭Junction 連絡先

北海道恵庭市島松寿町1丁目28−10
電話 0123-25-8384
JR千歳線 島松駅下車 徒歩10分

 


 

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