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第36回 動物農場 2014年6月

 ジョージ・オーウェル(George Orwell)の小説で『動物農場』(アニマル・ファーム "Animal Farm")という名作があります。1945年に刊行された、搾取する人間を追い出した豚が独裁者になってしまう顛末を描いたものでスターリンのスターリニズム"Stalinism"を痛烈に批判した寓話(おとぎばなし)です。

 お話は、それまでの「荘園農場(マナー・ファーム "Manor Farm")」 を解放した動物たちが「動物農場」と改名して七誡(しちかい)を創ります。
「二本脚は敵。」
「四本脚は良い。翼のあるものは仲間。」
「すべての動物は平等である。」
これら戒律はやがて特権階級となった豚たちが農場を支配するに従って自分に都合よくルールを変えてしまうのです。仕舞い(しまい)には、「四本脚は良い。二本脚はもっと良い。」として豚と人間の区別すらつかなくなってしまう顛末です。

 寓話や風刺、道化が演じる笑いこそが紛れもなく世相を映し出す鏡となるのですが、この「動物農場」に関しては現在社会に准えて(なぞらえて)も全く色褪せないどころか、現代日本そのままに当てはまることに驚きを禁じ得ないのです。作品が普遍的な人間の性(さが)を表現しているものだと言い切れます。

 多くの翻訳がある中で筆者は1984年に開高健が翻訳した「動物農場」を読んだのですが、併録されていた開高健の論考から「合唱、そしてたちまちの忘却があるだけで背骨がないクラゲ人間の大群」とニッポン国を評した彼も筆者同様に感じ捉えていたであろうことが伺えます。

 「動物農場」を原作としたアニメがあります。ハンガリー人のジョン・ハラス(John Halas)と英国人のジョイ・バチェラー(Joy Batchelor)のハラス&バチェラー(Halas and Batchelor)が1954年に公開した長編アニメーション映画がとても心に深く痛く感じました。

 アニメのシーンでは、ナポレオン(スターリン役とされる豚)さえもが一目を置く存在で不平不満を言わず黙々と愚直なまでに働き続ける人一倍力持ちの輓馬(ばんば)のボクサーが、人間との争いで怪我して満足に働けなくなったのをきっかけに豚の陰謀で馬の解体業者に売られ荷馬車で連れて行かれてしまうのを親友であるロバのベンジャミンが泣き叫び追いかけるシーンは目を背けたくなるほどです。

 ハラス&バチェラー社はケロッグなどの広告アニメーションを手掛けていましたが、戦時中には戦意高揚を目的とするプロパガンダなどを制作していたことが影響し、初の長編映画として「動物農場」を題材として選択する経緯に至ったと憶測されます。彼らは実験的な手法で作品を創るのと併せて、取り上げる題材も非常に先進的で刺激的なものであり、それは「動物農場」でも遺憾なく発揮された素晴らしい作品に仕上がっています。しかしながら、映画の興行成績としては振るわなかったそうです。

 アニメ版「動物農場」はジブリの宮崎駿監督が長編アニメーション黎明期に多大な感銘を受けお手本としたそうです。そのお陰で三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーからDVDが再発されて今回筆者は観ることが叶いました。このアニメは暗いトーンで子供向きの作品であるとは言い難いものの、原作から登場人物を減らしシンプルな構成とし物語の結末を変えていることもあり趣(おもむき)が異なります。機会があれば小説とアニメを比較してご覧いただくのも一興かと思います。

 以前にもご紹介しましたがコンピューターにも農場があります。コラム(「第32回 ザットネス・ゼアネス 」)で「サーバー農場」(サーバー・ファーム "Server farm")という言葉を紹介させていただきました。サーバー・ファームはサーバーが複数台集積された状況、つまりサーバー群を意味します。サーバー・ファームを効率良く機能させるためには負荷分散装置(ロードバランサ)を利用してリクエストを分散させて処理することで単体の負荷軽減を実現するという構成が可能でありました。サーバーを馬と喩える(たとえる)と複数の馬を配置する多頭立ての大型馬車とすることで全体の馬力が上がるという風に理解できます。

 それでは、この農場にはいったい何頭の馬(サーバー)が必要になるのでしょうか?クーペ (Coupe) と呼ばれる2人乗りの4輪箱型馬車の場合は1頭で十分でしょう。ワゴン (Wagon) と呼ばれる4輪荷馬車であれば2頭立てが普通です。コーチ (Coach)と呼ばれる4輪大型馬車をお持ちであれば4頭は必要となります。中世時代には次第に大型化して8頭立てで多くの人が乗れる馬車もあったそうです。いつも行列待ちになるほどのお客さんで賑わう馬車を走らせるのであれば良いですが、お持ちの馬車が定員に満たない場合にはどうなるのでしょうか?

 8頭立ての大型馬車ではなく、もっと小型のコーチやワゴン、ましてやクーペで十分かもしれません。ですが定期的に大きなイベントが催されるので大型馬車を走らせることが時折必要にもなるとしたらどうでしょう?普段は馬車を牽く馬が2頭もしくは4頭も居れば良いのですが農場では常時最低でも8頭もの馬を飼わざるを得ません。具合が悪くなる馬もいることでしょうから不測の事態を考慮すれば10頭以上の頭数の確保が農場にとって必要となってきます。この状態では農場経営が逼迫(ひっぱく)することは容易に予想できます。

 もし、乗客の増減に合わせて馬の頭数を調整できればと考えるのであれば、Amazon Web Services(AWS)といったクラウド・コンピューティングのサービスを採用することで課題を解決できます。Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)サービスを利用すれば必要な時に必要な台数の仮想マシンを調達することができます。大型馬車を牽くために馬が10頭必要になる際にオンデマンドで(仮想マシンのインスタンスとして)馬の調達ができます。使用後には不要になった馬を解放できます。代金は使った時間分だけで済みます。小さな農場で馬を余計に保有する余裕がない場合にはさぞかし朗報となることでしょう。更には週末には街に買い出しにいくなどで馬車の乗客が曜日や日毎に増減することでしょう。乗客の数に合わせて馬車を牽く馬の頭数を調整することが必要になります。これには需要が増加した際には自動的に馬を増やす、需要が減少すれば自動的に馬を減らしてコストを削減するということができます。

 AWSではAuto Scalingという機能を提供しており監視サービス(Amazon CloudWatch)と組み合わせることで需要の増減に合わせてシームレスに調節するためのルールを予め設定可能であり、利用者ご自身で最適なパフォーマンスとコストを維持できるというものです。ルールは最小2頭で最大8頭立てとして負荷が増える毎に1頭増やすなどと指定ができるのです。パフォーマンスとコストは相反する命題ですが、乗客が乗れないなどと迷惑をかけることなく馬の頭数を必要分だけ自動的に調整できるのは、農場の経営者にとっては望んでいた理想ともいえるかもしれません。

 ところで『動物農場』の余波についてですが、ピンク・フロイド(Pink Floyd)が1977年に発表したアルバム「アニマルズ」"Animals"は、寓話『動物農場』を題材(モチーフ)にしているということを知ったのは、LPレコードを購入してからだいぶ後になってからでした。印象的な「アニマルズ」のジャケットは発電所の上に豚が浮かんでいる幻想的な画なのですが、アルバムの最初と最後にあるアコースティック・ギターの小曲「翼を持った豚」"Pigs On The Wing"という曲タイトルの由来から「空飛ぶ豚」の画となっているのだろうと想像されます。

 ジャケット・デザインはオーストラリア人メディア・アーティスト(Jeffery Shaw)と著名な英国デザイン集団ヒプノシス(Hipgnosis)が担当。そして主役の豚の風船を創ったのはなんと本物の飛行船ツェッペリン号(Zeppelin) を建造したこともあるドイツの会社(Ballon Fabrik)という豪華さです。ジャケットの背景となったバターシー発電所(Battersea Power Station)はロンドンのテムズ川沿いにある四本の巨大な煙突が異様な存在感を示す火力発電所の建造物です。この建造物は無機質なコンクリートと造形から押し寄せる圧倒的な無言の圧力が故に「アニマルズ」以外にもザ・フー(The Who)の「四重人格」"Quadrophenia"ブックレットにベスパ(Vespa)を駆るモッズ青年の背景にもなっており、他にもジューダス・プリースト(Judas Priest)など幾多のロックアルバム/ビデオに登場してその存在感を誇示しています。

 ジャケット撮影の際、バターシー発電所の上空に巨大な豚の風船を飛ばしたのですが強風のため豚が逃亡してヒースロー空港のフライトが停止されるという事件がニュースで取り上げられ思いがけず大きな宣伝になったというエピソードがありました。何が功を奏するかは分からないものです。実はその様に苦労して撮った写真も結果的に納得できなかったらしく、肝心のアルバムジャケットは合成した画になりました。これまた何事も思いどおりには進まない事例だともいえましょう。

 それにしても何故「空飛ぶ豚」なのだろうか?が積年の疑問でしたが、飛べない豚はただの豚だからなのかもしれません。

次回もお楽しみに。

 


 

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