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第42回 ミラーマンの時間 2015年2月

 少年少女を対象とした小説として「ジュブナイル」"juvenile" というジャンルがありました。そのジュブナイルとされていたのは文庫サイズでSF趣向の小説が多かったように思います。ジュブナイルは70年代頃登場した言葉であり現在はあまり見かけませんが、対象読者を限定しようする試みは現在のライトノベルの位置づけとも似ています。

 当時は「ジュブナイル」という言葉も知らずに、小学校の図書館で最初に手にしたのが確か筒井康隆の「ミラーマンの時間」だったと記憶しています。何故、沢山ある図書館の蔵書の中でこれを手にしたのか覚えていないのですが、書籍のタイトルが「ミラーマン」とあったので円谷プロダクションが制作した特撮ヒーローと勘違いしたのだと思います。たぶんそうに違いありません。そんなうかつで軽はずみな選択であったのですが、読み始めるとお話の世界に一気に惹き込まれていきました。

 主人公の顔の右半分には黒い痣(あざ)があったので劣等感に苛まれていました。その右半身を「鏡」に押し当てていたら、ある時間になると右半身が鏡の中にめり込んでしまって左半身だけが左右対称で(痣のない)顔になり変身してしまいました。しかも(おまけで)空が飛べるようにもなりました。「ミラーマン」となってしまったのです。この特殊能力も厄介(やっかい)でして、ただゆっくりと空を飛べるだけで怪力や念動力を得た訳ではないのです。これが後で別の苦悩になります。更には、主人公が「ミラーマン」となっている時間に鏡の中にめり込んだはずの右半身だけが左右対称に黒い痣のある「パンダマン」がもう一人の自分として登場してきて悪さをするのでした。出典:筒井康隆(著)「ミラーマンの時間」角川書店(1977)

 このお話とは関係ないですが「パンダマン」は漫画「ワンピース」にも登場していました。続きは「ミラーマンの時間」の本文にてお楽しみください。

 お話は非常に突飛で今考えてもかなりきわどい題材を扱っているのですが、少年少女期に誰もが持つコンプレックス(ある種の卑小な劣等感)を肥大化させて妄想したようなストーリーはその時の心情にもぴったりと合致するものでした。

 この本がきっかけで「筒井康隆」という作家を知りました。その後は彼の著作である「家族八景」、「七瀬ふたたび」と次々と読み漁りました。それまでの買い与えられた本である世界名作童話の類(たぐい)や、あるいは、江戸川乱歩の「怪人二十面相」、「少年探偵団」はたまた「青銅の魔人」など児童向けとされた探偵小説や冒険活劇までが読書対象であり、その少年の行動範囲であり世界の大きさでした。しかしながら、そのドームの外側にも道は続いていてもっと世界は広大で未踏の地が続いており面白い物語に満ち溢れているのだと知りました。そしてそれらに触れたいと大海原を目指して漕ぎ出すことを思い立ったのだと回顧されます。その少年(筆者)の視界を広げてくれたのは「勘違い」と「ジュブナイル」のお蔭であったのだろうと思います。

 これは読書に限ったことではないと思います。同様にして知識や教養、興味の幅を広げるために自分が未だ知り得ない分野に踏み出すには、その存在自体を知るために楽観的で偶発的な何某かのきっかけがいるのでしょう。これには、親しい友達、同僚などから思いがけず存在を知るといった様な近隣の環境は少ならず関与するのでしょう。加えて、恐る恐るその分野に足を踏み入れるためには、割と低い踏み台の様ななんらかの緩やかな導入の仕掛けも必要となるのかとも考えます。初見の印象が良くない。または、最初から難解だとそれ以上先に進んで行こうという気も失せるでしょう。その敷居を低くしてくれるであろう「チュートリアル」の役割は大事なのではと感じます。筆者の場合にはその役割を果たしてくれたのが「ジュブナイル」であったからです。それは、たとえ子供向けだからといってもストーリーは決して矮小化せずストレートに本質を突き、しかも複雑な部分は隠蔽(いんぺい)して簡潔で分かり易く達成感があるもの。つまり物語が大事なのです。「ジュブナイル」がそうであったように「チュートリアル」もそういった姿が望ましいのではと思いを巡らせます。

 どのようなものであっても実際に新しい分野の知識を得ようとするのは困難を極めます。例えば、Webアプリケーション・フレームワークを習得するというのが困難さの具体例として挙げられます。フレームワークを習得したい動機の一つとしてWebアプリケーションを創れるようになるのがゴールとして設定すると、先ずはベースとなるプログラミング言語の基礎知識が必須となります。フレームワークが要求するJavaやRubyなどといった汎用プログラミング言語でベーシックなプログラムが書けることが前提になるからです。加えてWebアプリケーションを創るためにウェブ(HTTP/HTML)自体の基礎知識は勿論必要ですし、ほぼ必須とされるデータベースであるRDBMS(Relational DataBase Management System)への理解も事前に求められます。それらを経てやっと本題であるWebアプリケーション・フレームワークの習得へのステップとなります。

 次にフレームワークのプロダクトとして"Ruby on Rails"を選択するならば、"Ruby on Rails"に於ける「作法」を学ぶことになります。何故ならWebアプリケーション・フレームワークは、該当フレームワークの創造主(産みの親である作者)が、面倒な手間となる箇所を簡略化して作業ができるように様々な工夫を取り入れた個別の成果物であるからです。ですから「どのように記述すれば意図とする解釈をしてくれるのか?」や「暗黙の了解」となっている多数の項目を覚えて使うというのがフレームワークでの「作法」であり、それら「流儀」を習得する羽目になるからです。その「作法」は作者自身が独自に決めたルールであり、それら押し付けられる規則性を覚えなければ利用できないというのは学習者にとっては難易度が高くなります。それ故にフレームワークの習得は決して楽な学習ではなくむしろ学習コストは非常に高くつきます。それでもフレームワークを覚えて使おうとする理由は、一度覚えると余計な作業をしなくて済むなど簡略化された工程の効果に拠って生産性が上がるのを期待できるからです。「覚えたフレームワークをこれから何度も使います」という意気込みで習得する気が無ければ、結果として学習自体が無駄になってしまうのでしょう。

 このように習得のハードルが極めて高いRuby on Railsですが、「これからRailsを学び始める場合は」という前置きで「Ruby on Rails チュートリアル」が存在します。冒頭の「はじめに」の部分だけでもかなりの文字数ですので内容の濃さは感じることができます。これはRuby on Railsをはじめようという方にとって強く背中を押してくれるのだと思われます。「チュートリアル」は非常に重要な位置づけである証拠でもあるという一例です。

 それに特定の分野だけにいてどっぷり浸かっていると、頭(こうべ)が垂れて周りが見えなくってしまいます。時折、強制的にでも自分で自分の襟首を引っ張って顔を起こすような行動が時には必要なのかもしれません。

 ところでジュブナイルと言えばなのですが、まさに昔のライトノベルとも言える「集英社文庫コバルトシリーズ」がありました。その中でも特に印象が残っているのはお小遣いで初めて買った文庫で豊田有恒の「青いテレパシー」でした。この本が集英社文庫コバルトシリーズから上梓されていたのです。

 本屋さんに無数にあった書籍の中から何故この本を選んだかについてですが、それは表紙のカバー絵がとても魅力的だったので手に取った(ジャケ買い)のです。しかし、よもやこの挿絵を「寺沢武一」が描いているとは露程も知りませんでした。当時は著者の「豊田有恒」も初めて読むのでしたが、表紙イラストが寺沢武一作だったという事実は時間が経った後で知りました。その文庫本の表紙だけで想像を掻き立てさせる魅力的なイラストであったのが、今更ながらに納得させられます。寺沢武一といえば「コブラ」や「鴉天狗カブト」などの代表作があり、表紙イラストがそれらと同じく魅力的だったのは間違いありませんでした。寺沢武一の作品が好きなので(筆者と同郷ということで思い入れもあり)、自分が手にしたのは偶然の趣向であったのと同時に出逢うべくしての必然とも言え「そうだったのか」と感慨深いものがあります。

 この両氏の合作は豊田有恒、寺沢武一の両氏共に手塚プロダクション出身であることから何かしらの縁があったのかもしれません。そして表紙に違わず「青いテレパシー」はエスパーに覚醒するストーリーとしてスリリングな展開で読者(筆者)を魅了してくれました。この「豊田有恒」の著作も「筒井康隆」同様に広い世界への旅立ちを後押ししてくれた忘れがたい作品です。

 何が縁となるかは知る由もないですが、直感には素直に従うのが良さそうです。

 次回もお楽しみに。

 


 

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