IT・技術研修ならCTC教育サービス

サイト内検索 企業情報 サイトマップ

研修コース検索

コラム

スーパーエンジニアの独り言

CTC 教育サービス

 [IT研修]注目キーワード   Python  UiPath(RPA)  最新技術動向  Microsoft Azure  Docker  Kubernetes 

第41回 ぼくの好きな先生 2014年12月

 住んでいる場所からちょっと離れた場所に、何年も通っている歯科医院があります。とても腕の良い口腔外科も出来る院長先生と奥さんが歯科衛生士という治療と衛生のコンビネーションがワンストップで受けられるサービスが自慢の歯医者さんです。ちょっと変かも知れませんが、その歯医者さんでは近隣の美味しいお店(飲食店)の話を頻繁に聴きます。歯科医院の皆さんで美味しいお店を見つけては一緒に召し上がっているそうでして、それが忙しい皆さんの楽しみでありコミュニケーションの場となっているのでしょう。医師と衛生士、スタッフさん達のチームワークを支えているのだと想像に難くありません。家族みたいなチームなのです。

 そして皆で行ったお店が良かったら、女先生が美味しいお店を我々患者に治療中に話しかけて教えてくれるのです。「カレーのお店なんだけどお店がイタリアンな装飾でお洒落な感じでね、夜に行っても感じ良いと思うのよ。」このフレーズを歯周ポケットのチェックをしている合間に早口で口コミをインプットしてくれます。そのすぐ後で歯科予防のために歯石除去をする際にまた衛生士さんに、「この前ね、カレーの美味しいお店に行ったんですよ。」と同じ話をされるのです。女先生や衛生士さんが患者さんとの話題のきっかけとされているのが分かります。

 近所のオススメ飲食店のパンフレットが歯科医院の受付カウンターにも置いてあり、歯を治して美味しく食事しましょうという気持ちにさせてくれます。治療を頑張りましょうというエールであり、これはささやかな街おこしも兼ねているのでありましょう。女先生は帰り際に受付まで出て来て、いつもの高揚した口調で、「美味しいのよ、是非行ってみてね。」と、もうワンプッシュ背中を押してくれます。この歯科医院から学ぶべきことが沢山あってそれらを態度で教えてくれているようにも思えます。

 今年の夏頃だったと思いますが、教えて貰った例の多国籍料理(カレーが中心)のお店に行きました。午前中で治療が終わる日に、出掛けたついでにそのままお昼をいただきましょうという目論見です。お奨めとして紹介されたお店ですが、念のためお昼のランチで偵察に行ってお味を確かめようという作戦です。駅を出てからグーグルマップ(Google Maps)を使ってお店を調べると、わかりづらい小道の奥の一階にお店を見つけました。お店に入るとこぢんまりとした室内ですが無理にエスニックさを感じさせないモダンなインテリアで装飾された小綺麗なお店でした。席から見える厨房には外国人のシェフが調理をしており、厨房の手前には大きな瓶が並んでおり、沢山のスパイスがあるのです。肝心のお味ですが、本格的なカレーのランチセットは美味しくいただけました。ナンのお代わりも自由だったみたいですが、サイドメニューのタンドリーチキンも頼んだらお腹いっぱいになってしまいました。

 お会計をするためレジに向かおうと出口に向かうと、そこにはレジが無くてタブレット(Apple iPad)がありました。「クレジットカードを使えますか?」と店員さんに差し出すと、「使えますよ。」と言われてタブレットに差し込んだ小さなリーダーらしきものにカードをスライドしたのです。「それコイニーですか?」と伺うと、「いいえ、スクエアと言うのみたいですよ。」と答えられました。

 この会話に登場する「コイニー」"Coiney"は、スマートフォンで決済出来るサービスです。コイン(Coin)みたいな丸い独特の形状をした専用カードリーダーをスマートフォン(iPhone)のイヤフォンジャックに装着し、専用アプリケーションでクレジットカードの決済を行うサービスを提供しているのです。Coineyという名前は知っていました。アマゾン ウェブ サービス(Amazon Web Services, AWS)上でシステム構築してサービス展開をしている日本のベンチャー会社として話だけは聞いていたのです。そして、PayPal日本法人を立ち上げた方がスピンアウトしてCoineyを起業したという経緯だということとCoineyがAWSを採用した理由の一つに決済サービスを提供するにはクレジットカード情報保護に関する国際基準 PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)の取得が必須であったのでAWSがPCI DSS完全準拠しているお蔭で認証が簡易になるという特典があったということなどをAWSのセミナーで拝聴していたからです。

 ですから、iPadで会計をしようとした際に「あぁ、これが例の決済サービスなのかも?」と予想できたのでお会計の際にあまり驚かずに済んでいるのでしたが、「スクエア」"Square"という名前は聞いたことがありませんでした。

 ゲームの会社と同じ名前なのだなと思いつつも、良く眺めるとリーダーが丸ではなく四角形だからスクエアなのだろうなという程度の理解でしたが、どうやら米国市場では認知度がとても高くモバイル決済サービスとしては他社に先行している様子です。最近のニュースではApple StoreとLawsonがSquareリーダーの販売パートナーとなっており、日本でも普及が進むのかなとも想像されますが、このエスニック料理屋さんが外国人オーナー(たぶんインドの方)であるが故に(既知であったかもしれない)Squareの選択をされたのだろうか?などと憶測されます。

 これらは「モバイル決済」、「スマホ決済」あるいは「スマートペイ」などと呼ばれるジャンルとして登場してきている新興サービスです。

 調べてみると「コイニー」"Coiney"や「スクエア」"Square"以外にも「楽天スマートペイ」、「エニウェア」"Anywhere"、「ペイゲート」"Paygate"、「ペイメント・マイスター」"PaymentMeister"、「セラシー」"Salasee"など多数のサービスが昨今登場してきている状況です。

 そしてネット・ショッピングする際に利用されている「ペイパル」"PayPal"というオンライン決済サービスにもスマホで利用出来る「ペイパルヒア」"PayPal Here"が登場していました。PayPal HereもCoiney同様に専用のアプリとカードリーダーを使ってスマホで決済するサービスです。PayPal Hereのカードリーダーは二等辺三角形であり、ソフトバンクと提携して日本でサービス展開していました。どうやらカードリーダーの形を見て「丸」と「四角」と「三角」とで大まかには区別できそうです。

 よく思い出してみると、銀座アップルストア直営店で買い物した時にはレジに行かずにその場でショップ店員さんがiPhoneを取り出してカード決済して画面にサインしていました。レシートは商品を陳列してあるテーブルの下にあったロール紙のプリンターから印刷された紙を取り出して渡してくれていたのです。アップルストアでも何らかのスマホ決済サービスを採用していたはずです。最近のアップルストア直営店では(使ったことはないのですが)、「イージーペイ」"EasyPay" という名称で専用アプリとiPhoneだけで買い物できるサービスも始めた様子ですし、iPhone 6の登場と共にモバイル決済サービス 「アップルペイ」"Apple Pay" の発表をしていました。Apple PayはNFC(Near Field Communication)技術を使ったちょっと毛色の違ったサービスであり、これが日本で普及するのか否かは今後注視する必要があるのかもしれません。

 更に回顧してみると、そういえば「スカイプ」"Skype" が出始めた頃に最初に実際に使っているのを見かけたのは街角の花屋さんだったことを思い出しました。電話での注文や卸元への仕入れなど電話でのやりとりが多いのでしょう。そして便利なサービスをいち早く取り入れるのは、その恩恵を十二分に受けようと待ち構えている方々に相違ないのです。

 無料音声通話を可能にしたSkypeと同等に、Coiney、Squareなどの手軽にカード決済が利用できるサービスの登場は、街の商店街などにあるチェーン店ではない小売り商店や飲食店などにとっては、さぞや朗報なのだろと想像されます。カード支払いに対応することは、お客さんが現金の持ち合わせがないために販売機会を逃してきたお店にとっては嬉しいことでしょう。また、車での移動式販売やフリーマーケットなどの店舗型ではない販売でも利用できることは、販売・購入の両者にとっても利便性が増すのではと思われます。支払方法が多様化することは、消費者側にとっても使いやすいのです。

 更に深く回想してみると、筆者は学生時代に飲食店(の厨房)でバイトしていたのですが、その時代はカードを使う人はごくまれだった訳ですし、カードを利用するにはプラスチックの台にカーボン紙とカードを置いた後にローラーをゴロゴロ転がして転写するという具合でした。その後のカード会社への請求処理もかなり面倒だったはずです。その後、普及したのは電話回線を用いた(内蔵モデム)端末という仕組みだったと記憶しています。会計の際に処理に時間がかかり、あるいは電話が通じないことや先方(カード会社)が応答しないので結局、現金で払わせられた記憶が微かに残っています。最近は書店や百貨店などの大きなお店ではどこでも専用端末が整備されてカードが使えるようになっていますが、やはり小さなショップや飲食店では現金での支払いが多いと不便さを感じます。

 これら小さなお店でカードを導入できない妨げの主な原因として考えられるのは、カード専用端末の導入に掛かるコストとカード会社への手数料、そして、売上の入金スピードが挙げられます。小売りの商店では仕入など経費として入用となる資金の回転スピードが死活問題である場合も少なくないでしょうから、現金で支払って貰うのが一番なのでしょう。

 ですがこの障壁もスマホ決済サービスでは、スマホを利用するので導入コストはほとんど無し。しかも手数料も3.25%前後とお手頃。また入金も数日中(サービスによって差異あり)に行われることで回転も速い。導入に躊躇されていた場合にはそれらが払拭されるものかとも憶測が為されます。

 しかも、これらスマホ決済サービスに加えてPoS(Point of Sale)システムと連動した機能を組み込んだものまで登場してきています。前出のCoineyでは他のPoSサービス(EC-Orange POS)と連携できる旨を謳っていますし、対するSquareはPOSレジアプリ「Squareレジ」を提供開始するニュース(2014/11/21時点)が流れていました。これらにより面倒だった商品在庫や販売管理などが手軽になるのかとも思われます。ネットショップやフリマだけではなくて、これから個人で店舗を構えて本格的にお店を開こうとする方も増えてくるのかもしれません。

 個人的には近くに美味しい珈琲がいただける喫茶店ができるととても嬉しいです。

 最後に、冒頭でご紹介した歯科医院の院長先生は一昨年の春に急逝されました。以前は近隣の飲食店で院長先生と女先生と出遭うことが度々ありました。開店したばかりのお店にて御一緒させていただきご夫婦で嬉しそうに話される先生の姿が想起されます。先生に感謝して治療していただいた歯を大切にします。ご冥福をお祈りします。

 次回もお楽しみに。

 


 

 [IT研修]注目キーワード   Python  UiPath(RPA)  最新技術動向  Microsoft Azure  Docker  Kubernetes