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「Webガバナンス」のススメ

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第13回 Webガバナンスの考え方を「緊急時の更新」にも ~事故・障害時に公式サイトを止めない手順~ (穂苅 智哉) 2026年9月24日公開

このコラムでは、「Webガバナンス」をテーマに様々な切り口で、突っ込んだ内容までお届けしてみたいと思います。

最近はより一層、サイバーセキュリティ関連のニュースを目にするようになりました。障害や事故が起きたとき、企業は「何を発表するか」に意識が向きがちです。ですが実際には、その前の段階でつまずくことが少なくありません。誰が更新するのか、どのページに掲載するのか、どこまで確認が取れれば公開してよいのか。こうした基本が決まっていないために、公式サイトに何も出せず、利用者や取引先の不安だけが先に大きくなってしまうのです。

今のWebサイトは、単なる会社案内ではありません。サービスの案内、問い合わせ受付、採用情報、会員向け機能など、企業活動の入口として機能しています。だからこそ、障害やインシデントが起きたときに、公式サイトが止まることは、情報発信の停滞だけでなく、企業の信頼そのものに直結します。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」(※1)でも、委託先を含むサプライチェーンを狙った攻撃や、脆弱性を悪用した攻撃が重要なリスクとして挙げられており、被害を防ぐことと同じくらい、その後にどう正確な情報を出すかが問われる時代になっています。

(※1)https://www.ipa.go.jp/security/10threats/10threats2026.html

【Webガバナンスとは】緊急時こそ問われる情報発信の考え方

Webガバナンスというと、平時のルール整備やセキュリティ対策をイメージする方が多いかもしれません。しかし本来は、『WebサイトやWebアプリケーションを、統一された方針と明確な体制のもとで管理し、安全性や効率性、ブランド価値を維持・向上させるための枠組み』です。つまり、平時に整えた仕組みが、有事でもきちんと動く状態まで含めて考える必要があります。

たとえば、障害告知を出したいのにCMSの権限を持つ担当者が不在だったり、トップページの更新を制作会社に依頼しないと反映できなかったり、承認者が曖昧で文面が止まってしまったりするケースは珍しくありません。こうした状況は、単なる連絡不足ではなく、Web資産の管理責任と運用手順が整理されていない状態です。平時は目立たなくても、緊急時には一気に弱点として表面化します。

しかも利用者は、障害や事故が起きたとき、必ずしも企業の問い合わせ窓口に連絡してくれるとは限りません。まず検索し、SNSを見て、ニュースや口コミを確かめます。そのなかで公式サイトに情報がなければ、「把握していないのではないか」「対応できていないのではないか」という不信感につながります。Webガバナンスとは、ルールを持つこと自体ではなく、必要なときに公式情報を出せる状態を保つことでもあるのです。

【Webガバナンスの方法】事故・障害時に公式サイトを止めない手順

では、事故や障害時に公式サイトを止めないためには、何から始めればよいのでしょうか。大切なのは、特別なツールを増やすことではなく、まず「緊急時にどこを、誰が、どう更新するか」を見える形にすることです。

最初に整理したいのは、緊急時に使う発信面です。コーポレートサイトのトップページ、お知らせ一覧、サービス別の障害告知ページ、問い合わせページなど、優先して更新すべき場所を決めておく必要があります。あわせて、CMSが使えない場合の代替手段も重要です。たとえば、簡易なお知らせページを別で持つ、固定ページをすぐ切り替えられるようにする、SNSで一次告知を出して公式サイトへ誘導する、といった準備があるだけで初動は大きく変わります。

次に決めておきたいのが、更新と承認の流れです。通常時と同じ多段階の確認では、緊急時に間に合わないことがあります。一方で、確認を省きすぎれば誤情報の掲載につながります。そこで実務上は、「第一報で必ず書く項目」をあらかじめ定めておくのが有効です。①発生日時、②影響範囲、③現在確認中であること、④次回更新予定の目安。この4点だけでも、利用者は状況を把握しやすくなります。詳細が固まっていなくても、何も出さないよりはるかに信頼を保ちやすくなります。

さらに、文面テンプレートを用意しておくと、現場の負担を大きく減らせます。障害発生時、個人情報に関わる事案発生時、サービス停止時など、想定される場面ごとにひな形を作っておけば、緊急時にゼロから文章を考えずに済みます。きれいな表現よりも、誤解が少なく、継続して更新しやすいことを優先する。この割り切りが、有事のWeb運用ではとても重要です。

【Webガバナンスとセキュリティ】有事対応を属人化させないために

ただし、発信を急ぐあまり、セキュリティを後回しにしてはいけません。緊急時は、共有アカウントの使い回しや、必要以上に強い権限の一時付与が起こりやすくなります。しかし、その場しのぎの対応は、誤更新や二次被害の原因になりかねません。有事だからこそ、最低限の権限管理と更新履歴の確認は崩さないことが大切です。

そのためには、広報、情報システム、事業部門、制作会社の役割を平時から分けておく必要があります。広報は対外表現の整理、情報システムは技術的事実の確認、事業部門は影響範囲の把握、制作会社は更新作業の支援というように、責任の線引きが明確であれば、緊急時の迷いは減ります。誰か一人の経験や気合いに頼るのではなく、組織として動ける状態にすることが、Webガバナンスの本質です。

加えて、担当者が基本的なWebセキュリティの用語を理解しているかどうかも、初動の質を左右します。たとえば、権限管理、脆弱性、改ざん、セッションといった言葉の意味が共有されていれば、状況確認や判断のスピードは大きく変わります。セキュリティを専門部署だけのものにせず、Web運用に関わる担当者が共通言語として持つことが重要です。
基礎から学ぶなら、ウェブ・セキュリティ基礎(WS002)でWebアプリケーションの脆弱性を整理し、ハッキング:Webアプリケーション(CD038)で攻撃者の視点を知り、開発者向けアプリケーションセキュリティの基本(EL187)で開発・運用に必要な考え方を押さえる流れも有効です。

緊急時の情報発信は、広報の臨機応変さだけで乗り切るものではありません。更新権限、承認ルート、代替手段、テンプレート、そしてセキュリティの共通理解まで含めて整えておくことで、企業サイトは初めて「止まらない公式情報源」になります。Webガバナンスとは、平時のためだけの考え方ではなく、有事にこそ真価が問われる仕組みだと言えるでしょう。

 

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