IT・技術研修ならCTC教育サービス

サイト内検索 企業情報 サイトマップ

研修コース検索

コラム

クラウド時代のオープンソース実践活用

CTC 教育サービス

 [IT研修]注目キーワード   Python  UiPath(RPA)  最新技術動向  Microsoft Azure  Docker  Kubernetes 

第12回 Fedora18でOpenStackと最新クラウドソフトウェアを体験 (中井悦司) 2013年1月

はじめに

 2週間ほど前になりますが、Fedoraの新バージョン「Fedora18」がリリースされました。ご存知のとおり、Fedoraは、Red Hatが後援するコミュニティによって開発・提供されるLinuxディストリビューションです。Red Hatでは、将来のRed Hat Enterprise Linuxで採用予定の新機能をFedoraに搭載して提供しています。先進的な機能を多数のユーザに無償で使ってもらうことで、機能改善をはかりながら、その有用性を確かめているというわけです。
 Fedoraプロジェクトのホームページを見ると、ホビーユースのような印象を受けますが、実際には、デスクトップ、ワークステーション、サーバなど、幅広い用途に対応しています(*1)。Fedora18では、Ecualyptus、OpenStack、Heat、Aeolus Conductorなど、クラウドに関連するソフトウェア群の最新バージョンが提供されており、クラウド基盤の研究/勉強にも活用できます。私も早速、Fedora18でOpenStack Folsomを試してみました(*2)。
 ただし、最新の機能と併せて、時には「最新のバグ」も含まれていますので、使いこなすにはそれなりの努力も必要です。発見したバグは、Bugzillaでぜひ報告してください。
 それでは、前回に続いて、OpenStack Quantumの解説を続けましょう。今回は、物理サーバと物理ネットワークの構成を説明します。

Quantumの「エージェント」と「プラグイン」

 前回説明したように、Quantumを利用すると、「仮想ルータ」や「プライベートネットワーク(仮想L2スイッチ)」など、仮想ネットワークを構成する「パーツ」が定義されます。そして、実際にクラウド基盤を構築する際には、これらのパーツを実現する方法を選択することができます。
 具体的には、次の機能を提供する「エージェント」をプラグイン方式で入れ替えることで、これを実現しています。

  • L3エージェント:仮想ルータ機能を実現するモジュール
  • DHCPエージェント:サブネットのIPアドレス割り当てを実現するモジュール
  • L2エージェント:プライベートネットワーク(仮想L2スイッチ)を実現するモジュール

 現在の最新バージョンであるFolsomでは、L3エージェントとDHCPエージェントは、それぞれ1種類のみが同梱されており、特に選択の余地はありません。(Folsomに同梱のもの以外に、サードパーティが提供するエージェントもありますが、あまり詳細な情報は公開されていないようです。)
 一方、L2エージェントについては、複数のエージェントが同梱されています。比較的シンプルで、特別なネットワーク機器を必要としないものに、「Linux Bridgeプラグイン」と「Open vSwitchプラグイン」があります。ここでは、この2種類を前提として説明を進めます。

物理サーバと物理ネットワークの構成

 前述のプラグインを使用する場合、物理サーバの配置は図1のようになります。「コンピュートノード」の上で、仮想マシンインスタンスが起動します。

fig01

図1 Quantum利用時の典型的な物理サーバ配置

 ネットワークスイッチが複数ありますが、それぞれに役割が決まっています。OpenStackの管理コンポーネントは、「管理用ネットワークスイッチ」を経由して通信を行います。システム管理作業もこのネットワークを経由して行います。
「プライベートネットワークスイッチ」は、前回の図1における「プライベートネットワーク」の役割りを果たします。物理的には1個のネットワークスイッチですが、VLANやGREトンネルなどの技術を用いて、論理的に複数のネットワークスイッチとして機能します。
 そして、同じく前回の図1にある「仮想ルータ」の役割りを提供するのが、「ネットワークノード」です。Linux標準のiptablesによるNAT機能を用いて、アドレス変換やパケット転送の処理を行います。自宅ネットワークで、LinuxをインストールしたPCをルータ代わりに使用する話を聞いたことがあると思いますが、本質的にはあれと同じです。
 最後に「Linux Bridgeプラグイン」と「Open vSwitchプラグイン」の違いに触れておきましょう。先に「VLANやGREトンネルなどの技術を用いて」と説明しましたが、Linux Bridgeプラグインでは、Linux標準のネットワーク機能を駆使して、仮想マシンを所定のVLANに接続します。一方、Open vSwitchプラグインでは、より高度な仮想スイッチ機能を提供するオープンソースである「Open vSwitch」を利用して、VLANやGREトンネルに対する接続を行います。

次回予告

 Quantumの話題は、今回で一区切りとなります。前述のプラグインがVLANを構成する仕組みについて、もっと詳しく知りたいという方は、(*3)の資料を参考にしてください。この資料を読み解くには、Linuxのかなり詳細な知識が必要となりますが、前回触れた、「基礎技術の組み合わせで高度な仕組みが実現される」という雰囲気は伝わってくると思います。
 次回は、OpenStackネタの番外編ということで、「Baremetal Deployment」を紹介したいと思います。仮想マシンではなく、物理サーバのインストールをOpenStackから実施するという試みで、将来、OpenStackの正式な機能となる可能性もあるものです。

参考資料

*1形式別Fedoraダウンロード
 サーバ用途でFedora18を使用する際は、ここから「Fedora18 DVD」をダウンロードします。

*2OpenStack Folsom - QuickStart with Fedora18
 Fedora18に同梱のOpenStack Folsomを導入した際の手順メモです。さっそく、バグを見つけてBugzillaに報告しました。

*3How Quantum configures Virtual Networks Under the Hood?
 Linux Bridgeプラグイン、Open vSwitchプラグインのそれぞれについて、VLANを構成する仕組みを図解してあります。

 

++ CTC教育サービスから一言 ++
このコラムでLinuxや周辺技術の技術概要や面白さが理解できたのではないかと思います。興味と面白さを仕事に変えるには、チューニングやトラブルシューティングの方法を実機を使用して多角的に学ぶことが有効であると考えます。CTC教育サービスでは、Linuxに関する実践力を鍛えられるコースを多数提供しています。興味がある方は以下のページもご覧ください。
 CTC教育サービス Linuxのページ
 http://www.school.ctc-g.co.jp/linux/
 

Linux研修トレーニングならCTC教育サービス


 

筆者書籍紹介

Software Design plusシリーズ
「独習Linux専科」サーバ構築/運用/管理
  ――あなたに伝えたい技と知恵と鉄則

本物の基礎を学ぶ!新定番のLinux独習書

中井悦司 著
B5変形判/384ページ
定価3,129円(本体2,980円)
ISBN 978-4-7741-5937-9
詳しくはこちら(出版社WEBサイト)
「独習Linux専科」サーバ構築/運用/管理

 [IT研修]注目キーワード   Python  UiPath(RPA)  最新技術動向  Microsoft Azure  Docker  Kubernetes