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第51回 インターネットサービスの「データ削除」に関するユーザー調査(パート1) (中井悦司) 2019年1月

はじめに

 今回は、2018年に公開された論文「"If I press delete, it's gone" - User Understanding of Online Data Deletion and Expiration」を紹介します。これは少しユニークな論文で、電子メールサービスやSNSなどのインターネットサービスを利用する(技術者ではない)一般のユーザーが、「データ削除」の仕組みをどのように理解しているかをインタビュー調査をもとに分析したというものです。今回は、このような調査を実施した目的、および、主な分析結果を紹介したいと思います。

「データ削除の理解」を知る意義

 インターネットサービスを利用する際に、一度作成したデータ(コンテンツ)を削除する理由はさまざまありますが、それぞれのサービスにおけるデータ削除の仕組みを理解することは、プライバシー保護の観点で特に重要になります。技術系の方々には常識かもしれませんが、たとえプライベート用途のサービスであっても、一度、インターネット上に保存されたデータを完全な意味で削除するのは、必ずしも容易ではありません。どのような仕組みで削除が行われており、どのようなデータが削除されずに残り得るのかを正しく理解する必要がありますが、一方で、これを正確に理解するというのは、一般のユーザーには難しいというのも事実です。
 そこで、この論文の著者グループは、非技術系の一般ユーザー22名に対して、インターネットサービスのデータ削除の仕組みをどのように理解しているのか、インタビュー形式での聞き取り調査を行いました。具体的には、電子メールサービスとSNS(Facebook)を例として、受信メール、あるいは、公開コンテンツを削除した際に、実際にどのような仕組みで削除が行われているのかをホワイトボードで説明してもらい、その際に用いられた用語や概念を抽出・整理するという作業を行いました。具体的な結果はこのあとで説明しますが、一般ユーザーがどのような理解(もしくは、誤解)をしているかを知ることで、データ削除の仕組みを適切に説明するためのポイント、あるいは、新規サービスにおいてデータ削除の仕組みをどのように実装するべきかのヒントを得ようというのが、この論文の目的になります。
 また、一般ユーザーの理解と対比するために、技術系の専門家7名にも同様のインタビューを行い、さらに、一般ユーザーが理解するべきポイントについてのディスカッションも実施しています。その他には、データの自動削除(Expiration)に関連して、データ(コンテンツ)の価値の変化をどのように捉えているかという調査も行っています。

インタビュー調査で得られたデータの例

 まず、この論文の中では、インタビューの際にホワイトボードに描かれた内容の例があげられています(図1)。(a)(b)(c)は、それぞれ異なるシナリオ(サービス)における例で、単純な比較はできませんが、(a)は、「ゴミ箱に入れる」という典型的なユーザーインターフェースのレベルでの理解、(b)(c)は、インターネット上のバックエンドサービスを含めた理解であることがわかります。

fig01

図1 データ削除を説明したホワイトボードの例(論文より抜粋)

 また、(b)と(c)を比較すると、(c)は、何らかのサーバーがあり、そこから「ゴミ箱サーバー」に移動したデータが削除されるという内容になっています。一方、(b)では、複数のサーバーと複数のデータベースが連携した構造が描かれており、このように、バックエンドの理解にもさまざまなレベルが混在していることが読み取れます。大きくは、「ユーザーインターフェースレベルの理解」と「バックエンドを含めた理解」に分かれており、さらにバックエンドの理解にも詳細な違いが見られるという結果が得られたことが、論文内でも説明されています。
 そして、このようなホワイトボードを用いたインタビューの中で、共通して用いられた用語、あるいは、説明内容をまとめたいくつかの結果が掲載されています。たとえば、図2は、「データ(コンテンツ)を削除する理由」をまとめた結果になります。

fig02

図2 インターネットサービス上のデータ(コンテンツ)を削除する理由

 電子メールサービスとSNSに共通のトップ要因は、「古くて不要になったから」となっていますが、その他には、電子メールサービスに特徴的な例として、「受信ボックスを整理してわかりやすくするため」といった理由、あるいは、SNSに特徴的な例として、「恥ずかしい内容だから」という理由が見受けられます。つまり、ユーザーがデータを削除する理由は、利用するサービスの特性によって異なります。データ削除の仕組みをどのように実装し、どのような形でユーザーに提供するかという点は、サービスごとに個別に検討する必要があることがよくわかる結果と言えるでしょう。

次回予告

 今回は、2018年に公開された論文「"If I press delete, it's gone" - User Understanding of Online Data Deletion and Expiration」について、そこで行われたインタビュー調査の目的、そして、インタビューから得られたデータの例を紹介しました。次回は、本論文の主要テーマである、「データ削除の仕組み」に関わるキーワードをまとめた結果、そして、そこから得られた知見などを紹介したいと思います。

Disclaimer:この記事は個人的なものです。ここで述べられていることは私の個人的な意見に基づくものであり、私の雇用者には関係はありません。

 


 

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