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第21回 DXの本質 (辻真吾) 2022年4月

はじめに

DX(Digital Transformation)という単語を、いろいろなところで目にするようになりました。正直に言うと、「業務にコンピュータ使ってない会社なんていまどきないだろうに、変なバズワードがまた出てきたもんだ」と斜に構えて見ていました。ところが最近、私が直接関係するところでデジタル技術をもっと効率的に使うべきだと感じる出来事がいくつかあり、DXの意味するところに興味が湧いてきました。いろいろ考えてたどり着いた私なりの結論は、大きな組織におけるDXの本質的な意味は、オープンソースソフトウェアの利用とコミュニティへの貢献である、というものです。今回はちょっとまじめにDXについて考えてみたいと思います。

DXとは?

Webで調べるとDXについての情報がいろいろ出てきます。普段ビジネス書はほとんど読まないのですが、ちょっとお仕事で関係した会社の方からDXに関する本をいただいたので、良い機会だと思い読んでみました。福原正大著『DX×3P経営』という本です。国内外のDX事例の紹介からはじまり、大きな組織でDXを推進するための道しるべとなりそうな内容になっています。この本の48ページにDXの短い定義が載っています。DXとは、データとデジタル技術を前提とした組織と事業によって、顧客価値を大きく向上させるイノベーションである

ここで重要なことは、DXはイノベーションであるという点でしょう。イノベーションは革新のことです。どうしたら革新的なことができるでしょうか。組織改革や顧客価値の向上は私の不慣れな分野なので、データ分析で革新的なことをするにはどうしたらよいか考えてみましょう。一人の天才が次々に革新的なことを思いつくというのはちょっと考えにくいです。実際には、大量のデータとその分析から革新的なことをするには、試行錯誤が重要です。とにかくいろいろやってみる。これが重要です。機械学習アルゴリズムにはいろいろな種類がありますので、1つの方法でクラスタリングがうまくいかなくても諦める必要はありません。手法を変えたり、より良いパラメータを探したり、やれることはいろいろあります。データ分析でこうした試行錯誤を支えるのは、オープンソースソフトウェアです。Python自体もオープンソースソフトウェアですし、pandasやscikit-learnといったデータ分析に欠かせないライブラリももちろんそうです。また、オープンソースソフトウェアにはさまざまなものがあります。たとえばWikipediaの情報を使って、単語のベクトル表現を得られるWikipedia2vecというライブラリがあります。少し知識があれば、Wikipediaのデータをダウンロードして、GENSIMなどのライブラリを使えばできる作業ではありますが、それをあらかじめやってくれているので時間の短縮になります。試行錯誤の段階にあるときは、こうしたライブラリを利用することで、さまざまな実験を少ないコードで実行できます。つまり、イノベーションを起こそうとするとき、オープンソースソフトウェアは欠かせない存在です。まさにDXの必需品と言えるのではないでしょうか。

オープンソースソフトウェア

オープンソースソフトウェアは、利用者がソースコードを見ることができ、改変や再配布が許されているソフトウェアです。作っている人達も基本的にはお金をもらわず開発しています。すこし注意しなければならないのはライセンスです。オープンソースソフトウェアだからといってすべてが自由というわけではありません。GPLでは、そこから派生したプログラムのソースコードもGPLと同じように公開し、改変や再配布を許さなければなりません。これはコピーライトに対して、コピーレフトと呼ばれる概念です。こうした制限がないBSDMITといったライセンスもあります。

Pythonを使ったデータサイエンスにおいて、オープンソースソフトウェアの利用は欠かせません。自由に使え、場合によっては改変もできる非常に使い勝手がよいオープンソースソフトウェアですが、問題も指摘されています。もっとも大きな問題は、タダ乗りの指摘です。ライセンスに従っていればオープンソースソフトウェアを使ってビジネスを展開し、収益を上げることはまったく問題ありません。ただ、世界的な大企業がタダ乗りで莫大な利益をあげるのは倫理的に許されるのかといった問題は考える価値があると思います。もう1つはオープンソースソフトウェアの開発体制です。非常に優秀な人達がボランティアで開発に参加するというスタイルなので、場合によってはコミュニティが分裂したり、開発が止まったりすることもあり得ます。こうした不安要素がビジネスでのオープンソースソフトウェア利用にブレーキをかけている面もありそうです。

大きな組織とオープンソース

Pythonの生みの親であるグイドさんはいまはマイクロソフト社に所属しています。2021年のPyConJPに寄せられたビデオレターによると、Pythonの高速化のために多くの時間を使っているようです。グイドさんの例だけでなく、世界的な大手IT企業ではオープンソースソフトウェアの開発者を雇用し、業務の一環として開発を続けてもらうというやり方はよく見られます。これはタダ乗り批判を避けつつ、開発体制を安定させるという意味で非常に良い施策だと感じています。これを、日本の大企業におけるDXと結び付けてみましょう。日本の大手事業会社がオープンソースソフトウェアの開発者を雇用するのはどうでしょうか。製造業、物流、金融などその分野に関連したオープンソースソフトウェアにまとを絞り、開発者を雇用してコミュニティを支えます。開発したソフトウェアは自社で利用しつつ、ソースコードを公開します。公開されたソースコード見て、世界の誰かが劇的な改良を施してくれるかもしれません。結果として、自社のDXも加速します。大きな組織が内向きな秘密主義を転換し、一部をオープンにすることで、イノベーションが進むのではないかと考えています。

まとめ

大企業など大きな組織においてDXを推進する時、オープンソースソフトウェアの利用は欠かせないものと考えます。利用するだけではなく、開発にも積極的に貢献することで人類の発展にも貢献できます。夢物語だと思う方もいるかもしれませんが、日本の大企業とオープンソースコミュニティのコラボレーションにはきっと未来があります。微力ながら今後も啓蒙活動を続けていたきたいと思います。

 


 

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