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第55回 ムック 2016年3月

きっと「ムック」って不思議な語感の言葉を聴いたことがあるでしょう。

子供向けテレビ番組のキャラクター「ガチャピンとムック」の赤い方じゃなくて、本屋さんの店頭で見かける大判の雑誌でCDやDVD等が付録となっている本の事です。
最近ではエコバックやポーチなど付録(本体?)を同梱した分厚い本が平積みされた様を見かけていることでしょう。
昔見たムック本の類(たぐい)は定期発行される雑誌の臨時特別号とか増刊号で見開きにカラー写真が掲載されておまけに紙で組み立てるジオラマなどの付録がついている風体の本でした。

これらが「ムック本」という名称でジャンルされている「雑誌のような書籍」です。

「雑誌のようだけど書籍扱い」というムックが存在する一つの理由には、日本独自の出版物の分類と流通が絡んだ「大人の事情」というのが登場した経緯だそうですが、大判で平積みされたムックたちはそんな理由を覆す(くつがえす)凝縮された価値と強いインパクトの存在感がありました。

この「ムック」(Mook)という呼び名は、直感では理解不能、音感では残響する奇妙な名前の由来について調べると「ブック(書籍)」(Book)と「マガジン(雑誌)」(Magazine)二つを掛け合わした「あいのこ(混合)」(Mixed)としての造語「ムック」(Mook)なのだそうです。

「ムック」を「あいのこ」と顕(あらわ)しましたが、この言葉自体には背景からくる差別的な意味合いを持つためにあまり良い意味で使われないかもしれませんが、ムックに関して表現する時には、しっくり馴染みます。二つの良い点が混ぜ合い調和された語感として響きます。

以前のコラム(「第54回 虹」)で「融合」(フュージョン)の可能性について言及しましたが、「融合」(フュージョン、fusion)した結果としての「混合」(ミクスチャー、mixture)は、複数の特性を併せ持つ事となります。周囲を取り巻く環境変化や自然淘汰から回避し生き残る選択肢の一つ英知であり、自然界において遠い過去から未来へと営々と続く必然の行為、同時に最善の策であろうと思います。

例えば人間界では、戦前からオペラ歌手として活躍し「吾等のテナー」(われら―)と親しまれた藤原義江が挙げられます。藤原義江は日本にオペラを根付かせた功績も然ることながら、彼の人生そのものや皆に愛された魅力ある人物像に興味をそそられますし、彼の生き様に憧れも抱かせます。

藤原義江の他にも鰐淵晴子や草刈正雄を筆頭に有能な方々が沢山おられます。
少女時代には天才少女バイオリニストとして登場し「ノンちゃん雲に乗る」で女優となる美女の代名詞的存在である鰐淵晴子。
ファッション・モデルを経て「復活の日」、「汚れた英雄」を代表作とする映画俳優の草刈正雄。

当時は「いい男」(美男子、イケメン)と言えば草刈正雄でありました。口八丁の太鼓持ちの達人に持ち上げられ如何な美辞麗句(お世辞)を並べたとしても「草刈正雄には負ける」というのは世間一般の共通認識であり常識となりました。
近年の草刈正雄はコメディ路線にも目覚めたようで正に無敵です。池波正太郎の小説をドラマ化した「真田太平記」での真田幸村(信繁)から真田昌幸へと見事に(次男から親父に)転身を遂げた三谷幸喜作の大河ドラマ「真田丸」で絶賛活躍中なのはご存知のことでしょう。

脱線ついでに、他ならぬ筆者も毎週「真田丸」の放送を楽しみに待ち侘びている視聴者の一人です。食えない奴である真田昌幸(草刈正雄)も然ることながら、なんと言っても寺島進演じる出浦昌相(盛清)がカッコイイですね。素破(すっぱ、忍び)として義を持って信じたことを貫き徹す生き方は、戦乱の世で生き抜くためにこそ信用を重んじるのだと堺雅人演ずる真田信繁(幸村)に説いていました。一度、腹を括ったら何があってもブレないという姿勢は、乱世の武士だけにではなく現代サラリーマンに示唆を与えてくれるものです。
代表的な美男美女を例示しましたが現在もメディアに登場される美麗なモデルやタレントさんの中にも良く散見されることでしょう。

経済界では、2016年5月1日からアマゾンジャパン株式会社はアマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社を存続会社として合併し、株式会社から合同会社に組織変更しますというニュースを本日(2016年3月17日)知りました。社名をアマゾンジャパン合同会社へと変更する予定の様子で合同は混合でありミクスチャーです。
これはアップルが、アップルジャパン株式会社を解散しApple Japan合同会社を設立としたのと同じ戦法ですが、舵を切った背景にはグローバル企業が抱える税制上の課題を克服しようとしたものと考えられます。
関係ないのですが「合同」と聴くとホワイトリカーゴードーを想起してしまうのは、もしかして(北海道出身だからなのか?)筆者だけなのかとふと疑問が湧きました。

プログラミング界隈では、プログラミング言語Rubyにはモジュール(Module)をクラス(Class)に「ミックスイン」(Mix-in)することで簡単に機能を増強することができます。ミックスイン(Mix-in)はRubyでの最たる特徴とも言えるでしょう。
また別のプログラミング言語Pythonでは「多重継承」(multiple inheritance)が利用できます。同時に複数のスーパークラスから属性を継承することでそれらの機能を包含できる強力な機構です。同時に複数の集合に属するような事象を表現するミックスイン・クラス(Mix-in Class)と呼ばれるテクニックとして使用することができるものです。これはオブジェクト指向プログラミングと呼ばれるパラダイムで記述可能なプログラミング言語での諸刃の剣とも言える武器の一つです。

そしてコンピュータ業界では、常にハードウェアとソフトウェアの境界は混然としています。ですがこの国境は近年大きく書き換えられています。

ここでは「ソフトウェアがすべて制する」を言及したいので強い印象を持って頂くために、前々回(「第53回 我時想う愛」)ウェブ・ブラウザ(Web Browser)の始祖鳥であるNCSA Mosaicを開発しネットスケープ・コミュニケーションズ (Netscape Communications Corporation) 立ち上げてウエブ(World Wide Web)と未来を魅せることで世界を一変させた先導者(ギーク)で扇動者(アジテータ)であるマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)に再登場を頂きますが、彼が以前(2011年)にウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal) に寄稿した"Why Software Is Eating The World"「ソフトウェアが世界を呑み込むのか?」というショッキングなタイトルが注目を浴びた記事の結論には「ソフトウェア企業が経済の大部分を手に入れることになるだろう」と締め括っています。

態々(わざわざ)大御所のマーク・アンドリーセンから御神託を賜るまでもなく、市民ケーンですらない凡庸な市民の筆者でも間近に肌に感じていたことでありました故に、皆さんも薄々そのようなことを感づかれていたのだと思います。近年、認識の移行(パラダイムシフト)は劇的に加速度を増している事実はニュースを眺めれば一目瞭然の人為的現象です。さらにご紹介した前述したマークの記事の文中ではIT以外の他業種どころか全産業に「ソフトウェア化」が及ぶことを彼は予言しています。

その実例として既にタワレコ(Tower Records)は(2004年)破産、ブロックバスター(Blockbuster)も(2010年)潰れています。その反対にブロックバスターの競合であったネットフリックス(Netflix)が現在絶賛大盛況ぶりはお聴きおよびでしょう。以前のコラム(「第39回 ハウス・オブ・カード」)の後日談として、昨年(2015年9月)には筆者待望であった日本上陸も果たしています。

技術トレンドに目を向けても、SDN(Software Defined Network)からの潮流がSDS (Software Defined Storage)、SDI(Software-Defined Infrastructure)へとその対象範囲が大きく膨らんで電子計算機環境全てを包み込みました。更には便乗とも言えるSDE(Software-Defined Environment)やSDDC(Software-Defined Data Center)までもが登場しています。
ちょっとバブルな状況ですが、これらアンブレラターム全てには繰り返すまでもなく「ソフトウェア定義の」という前置詞が必ず付いています。

電子計算機はマシン(Machine)ですから当然至極ハードウェア(Hardware)が主役であり長年スポットライトを浴び続けていたのですが、主役(電子計算機)に命令を行う脇役であったソフトウェア(Software)が一気に注目されることになっているのが現状です。

有識者の方にはちょっと口にするのも憚り(はばかり)ますが、基本的なハードディスクの仕組みはハードディスク・コントローラが磁気ヘッドを制御して磁性体が塗られたプラッター(磁気ディスク)からデータを読み書きするのは、プログラムでありソフトウェアで行います。ハードディスクというハードウェアの性能を生かすも殺すもこのコントーラのプログラム次第です。
実は筆者の師匠の師匠、つまり大師匠(筆者の師匠、井澤信悦氏の師匠の梅澤洋一氏)は、米国で働いておられた時期が長く某超有名ハードディスク会社に在籍された経歴がありましてハードディスク・メーカーで正にこのディスク・コントローラを創られていたのです。新橋の場末の居酒屋の狭い座席に師匠と大師匠に挟まれ硬い椅子に座り焼酎を酌み交わしながら磁気ヘッドをどのようにコントロールするのかを「べらんめえ」口調で熱く語る大師匠からご指南賜りましたのを回顧しました。

ましてや、ソフトウェアをハードウェア化したASIC(Application Specific Integrated Circuit)ともなればプログラムを焼いたハードウェアですから元から主役はプログラムですし、FPGA(Field-Programmable Gate Array)に至っては埋め込んだプログラムを製造後に変更も可能なのです。
コンピュータがストアドプログラム方式(Stored-program Computer)に変わった時点でハードウェアは箱となり、箱をコントールしているのはオペレーティング・システムを筆頭とする基本ソフトウェアです。その基本ソフトウェアはハードウェアをコントロール(制御)するプログラムの塊なのです。「制御」は「権力」とイコールであり、それ自身が「力」なのです。

思い起こせば、真田家に窮地を齎した徳川家康と北条氏直の同盟に准える(なぞらえる)ミクスチャー(混合)の成功例としてのマイクロソフト(Microsoft)とインテル(Intel)の混成チームとなったWintel(ウィンテル)提携関係の功績により、結果的にハードウェアのコモディティ化(commoditization, 日用品、どれを買っても大した差がないこと)を推し進めることになりましたし、Xen(禅)から始まったサーバー仮想化技術の進歩により固有ハードウェアの呪縛から解き放たれて、一層ハード離れが加速されたことでソフトウェア化を促進しました。そして決定打となった(息の根を止めた)のは、クラウド・コンピューティング・サービスの出現でありAWS(Amazon Web Services、アマゾン ウェブ サービス)の快進撃です。

もうハードウェアを買う必要がないのです。スペースを占有している使わないマシンが暖房器になることもなく、Amazon EC2 (Elastic Compute Cloud)で必要な時に必要なコンピューティング・リソースをオンデマンドで調達できるのです。
更にはクラウド・ネイティブなサービスを利用する手法、例えばAWS Lambda(サーバーレスで任意のプログラムを実行できる機能)とAmazon API Gateway(プログラムを公開して自由に利用できる機能)を混合(ミクスチャー)すれば、必要なタイミングで実行に必要な環境を立ち上げて用意した処理(プログラム)を勝手に実行してくれます。フルマネージド・サービスでありプロビジョニング(provisioning, コンピュータリソースの準備と調達)や面倒な管理の手間がありませんので、EC2を使うこともないために仮想の計算機リソースですらも全く意識する必要性がなくなってしまいました。

やりたいことだけをやれば良い、つまりプログラムだけ書けばオーケーというのです。

まるで魔法使いが妖術や呪術を駆使するかの如く呪文を唱えて物質化する童話の様相を呈しますが、この鋼の錬金術が現実に現在(いますぐに)使えるのです。

先日(2016/3/12)恒例のJAWS DAYS 2016に参加しましたが「ソフトウェアがすべて制する」を全く意識せずとも殊更に感じました。最近注目のソラコム(SORACOM)は、MVNOの会社ですがAWSを全面採用した(ソフトウェア実装の)システムになっておりIoT(Internet of Things)のAWS(プラットフォーム)を目指しているベンチャーです。このソラコム(SORACOM)をスタートアップしたのは、昨年(2015年3月)に退社されたばかりの元AWSのエヴァンジェリスト玉川憲氏。このSORACOMが提供するSIMを利用して多種多様なデバイスが今までは届かなかった用途にまでネットに繋がれ制御され始めており、まさに「ソフトウェアがすべて制する」を地で行く事象であると言えましょう。
更に駄目押しで「マイクロサービス」(microservices)にも言及したいのですが、この話題は出し惜しみして次回以降に繰り越させて戴きます。

ここで「ソフトウェア」原料の要となる「プログミング教育」の重要性については、以前にも(「第15回 北の国から」、「第30回 ニッケル・アンド・ダイムド」)で説いております。冗長ですが大事なことなのでここでも繰り返させて頂くのですが、これからもコンピュータを使う仕事は増えていくことでしょうし、コンピュータで生計を立てるおつもりであれば「プログラムの知識」を持っていなければ立ち行かないことだけは、ご理解頂ければ幸いです。

宣伝ですが「Python入門」というプログラミングのコースを勉強しながら創りました。昨年後半から勉強を始めてコツコツと書き始めようとしたもののPythonにはたくさんの機能があって「何を書くべきか」に悩んで筆が進まず、年明けの仕事初めからもう間に合わないと本格的にコンテンツ製作に取り掛かると今度は「何を書かないのか」が重く伸し掛かって苦心惨憺した次第です。ですがRubyの先生である相棒の直人氏に演習課題は作って貰いました。ご興味あればですが講習会にてお逢いしましょう。またこの話はいつの日か「空飛ぶモンティ・パイソン」"Monty Python's Flying Circus"と題したコラムに書かせて頂きたく思っています。それまでお楽しみにお待ちください。

今回タイトルの「ムック」(Mook)と同名異人に「ムック」(MUCC)という名前の日本のヴィジュアル系ロックバンドが居ます。但し、英単語のスペルが異なることでお分かりかもしれませんが、バンド名の由来はどうやらテレビのキャラクターである「ガチャピンとムック」からだそうです。因みに、緑色の「ガチャピン」は恐竜なのは知っていましたが、頭にプロペラが付いたアバンギャルドな赤い体躯の「ムック」が雪男(イエティ)だとは知りませんでした。
「ムック」(MUCC)はヴィジュアル系を冠してオルタネイティブ・ロック、J-POP、エレクトロニカ、メタルコアと様々なジャンルをミクスチャーしたロックを展開するバンドです。
彼らのミクスチャー・ロック(Mixture Rock)のテイストが混成された2012年発売のアルバムで「シャングリラ」"Shangri-La"(桃源郷、ユートピア)に収録されている「ハニー」"Honey"という楽曲がありまして、(この曲を一聴して頂きたいのですが)とても御髪が乱れています。つまりは現代口語で乱暴な言葉遣いの歌詞なのですが、演奏と相まって不思議と如実にニュアンスが伝わってくるのです。

悪い言葉、良い言葉、言葉を扱うのはとても難しいものですが場面に応じて言葉を選択するのは大事です。ですが、何を伝えたいのか、何について話すのか、話すべき本質である内容やそれを紡ぐ物語はもっと大事です。それよりも、もっと、もっと大事なのは、誰が誰に話をしているのかです。話している人の人柄、その話を聴いている人の裁量、そして会話している二人の人間関係、それこそが一番大事なのだと思い巡らしました。
普段は寡黙で怖い大師匠が熱くなって気持ちよく「べらんめえ」(下町言葉)で話されるのを拝聴できるのは、弟子の弟子(筆者)も体躯の芯まで弛緩する心地良いものであり、その時間を共有したことが楽しいと記憶されることで会話自体が思い出となっています。
このコラムを読んで戴いている奇特な「あなた」と筆者がそのような緩やかな関係を築けることを期待しています。

それともう一つ、以前のコラム(「第20回 よだかの星」)にも書きましたが、他と違うという事、特異であることは希少で価値があり素晴らしいことに他ならないのです。
「あいのこ」は「合いの子」ではなく「愛の子」と書けます。言葉という道具を使う方の心持ちが大事なのです。

桃源郷なのかもしれませんが、些細な違いなどは美徳として多様性を難なく受け入れることができる程に懐が深い器の大きい人間になりたいですし、周囲の人間にも影響するように行動することで寛容で成熟した大人としての社会を築く一助となりたいものです。

次回もお楽しみに。

 


 

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