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第53回 我時想う愛 2015年12月

巷で噂される「スラック」"Slack" というサービス(ソフトウェア)をお聞き及びであるか、もしくは既にご存知の事かもしれません。

"slack" という言葉自体は、「緩い(ゆるい)」、「弛んだ(たるんだ)」、「のろい」、「いい加減な」という意味するために一般的にはあまり好い印象を持たれないのかもしれませんが、「きつく」張りつめた糸がプッツリと切れてしまうのを考えれば「ゆるい」というのはそんなに悪いことではないでしょう。そういえば、以前に人気を博したLinuxディストリビューションにも「スラックウェア」"Slackware" という名前が使われていたのを想い出しました。

掲題の「スラック」"Slack" という名称のサービスは「コラボレーションツール」とカテゴリされるもので2013年に公開後に本格的なサービスインが2014年に始まりました。用途としてはチーム内でのコミュニケーションを取るために役立つとされています。「スラック」"Slack" は、ソーシャルの波を牽引した革新的な写真共有サービスとして名を馳せた「フリッカー」"flickr" 創業者であるスチュワート・バターフィールド (Stewart Butterfield) の手に拠るものです。

このサービス「スラック」"Slack" が最近また話題に上ったのですが、"Slack" を手がけたのが前出のスチュワート氏であることがその要因の一つではあるのですが、リリースして間もないベンチャーが1.6億ドルもの資金調達を行い、その企業価値は30億ドルに達するであろうことが各所で取り上げられているのです。つい先日の日経新聞でも躍進する新興企業の代表格として"Slack"が大きく掲載されていました。

ネットスケープ・コミュニケーションズ (Netscape Communications Corporation) 創業者(現在は投資家)のマーク・アンドリーセン(Marc Andreessen) の言葉を借りるまでもなく、この30億ドルという多額の評価額はマイクロソフトですら十年以上かけて達した額であることを鑑みるとそのスピード感がご理解頂けるでしょうし、つまりは投資家にとっての金蔓(かねづる)として有力な候補となることで注目されているのです。

フォーチューン誌 (Fortune Magazine) では、この様にビリオンダラー・スタートアップで一躍スターダムにのし上がった企業を「ユニコーン(一角獣)」"Unicorn" と呼称するらしく「スラック」"Slack" 以外にも百社を超える複数のユニコーンが存在していると状況を報告しており、既出の様にITベンチャーへの投資家たちは、"Slack"を筆頭に、新興勢力となりつつある彼ら「ユニコーン」"Unicorn" へ向けての期待値は如何程のものであろうかというのはその想像に違わないものでしょう。

ですがGoogleが出現し、その後の Facebook、Twitter、Dropbox、Evernote という名立たるベンチャーが急成長を遂げたときの美酒を味わえなかった投資家達が今度こそはと御相伴に与かることを夢見ているのでしょうが、「柳の下の泥鰌」(一度上手く行ったからといって二度あるとは限らないという意味)なのでは?と危惧されます。勿論、ユニコーンと呼称されるベンチャー企業の側では、いつの日にかマイクロソフトに追いつけ追い越せという野望を大志としてお持ちなのかも知れません。

この「ユニコーン」"Unicorn"と聴いて思い出されるのは、マーク・ボラン (Marc Bolan) 率いるティラノザウルス・レックス (Tyrannosaurus Rex)の3rdアルバム「ユニコーン」"Unicorn" であり、これに収録された "She Was Born To Be My Unicorn" という曲を口ずさむのかもしれませんし、このアルバムタイトルをそのままバンド名に関した「Unicorn (ユニコーン)」という奥田民生が在籍していた人気ロックバンドの名前かもしれせん。そういえば、ダウンタウンの松本人志が着ぐるみを着てユニコーンになっているのを「浜田ばみゅばみゅ」(浜田雅功)のプロモーションビデオを見かけたばかりでした。

音だけでなく映像で想起されるものとして、淡く青い背景に佇む「ユニコーン(一角獣)」の強烈なイメージを植え付けた映画「ブレードランナー」"Blade Runner" があります。

「ブレードランナー」"Blade Runner" は、フィリップ・K・ディック (Philip K Dick)著のサイバーパンク(Cyberpunk)小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」"Do Androids Dream of Electric Sheep?" での世界観を見事に映像化したサイエンス・フィクション(Science Fiction)映画です。リドリー・スコット (Ridley Scott) が監督し1982年に公開されサイバーパンク(小説)を具現化したSF映画の金字塔となる作品なのです。この映画で主役を務めるのがレプリカント(Replicant、人造人間)を追い詰めるリック・デッカード(Rick Deckard) 役のハリソン・フォード(Harrison Ford)です。

「ブレードランナー」"Blade Runner" で登場する 「ユニコーン」"Unicorn"は映画の中である種の象徴として登場しながらも微妙なニュアンスを醸し出しています。登場シーンとしては、デッカードがぼんやりと白昼夢を見る際に何故か"Unicorn"のイメージを抱くというものでこのシーンが故に物議を呼んでいたりするのです。

それはラストシーンで折り紙のユニコーンをデッカードが拾う行為によって恣意的な意味を観客に暗示させます。折り紙のユニコーンをアパートメントの前に置いていったのは、ガフ(Eduardo Gaff)というLAPD(Los Angeles police department) の刑事なのです。一説にはデッカードもレプリカントなのだという解釈なのですが、これについてはご自身で映画をご覧頂ければと思います。実はブレードランナーには複数のバージョン(劇場公開版、ディレクターズカット、ファイナルカットなど五種類)が存在するので各々で編集が異なるために受け手である観客の解釈や印象までも異なるのです。まるでパラレルワールドの様相です。

「ブレードランナー」"Blade Runner" 公開から四半世紀以上(約三十五年)経った現在、続編 "Blade Runner 2" が創られるというニュースが流布されていて期待に胸を膨らませています。公開は2017年もしくは2018年頃の予想ですので、そうするとまさに最初の物語と同じ時代になるのです。続編では、リドリー・スコットは制作側でドゥニ・ヴィルヌーヴ(Denis Villeneuv) 監督が指揮を執ります。肝心要(かんじんかなめ)となる主人公は「きみ読む(きみに読む物語)」"The Notebook" で一躍スターダムを駆け上がった一癖ある役者のライアン・ゴズリング (Ryan Gosling) が主演を務めるそうですので、とても楽しみに待っています。
しかも、ハリソン・フォード(Harrison Ford)も登場するのだそうです。ハリソン・フォードには、「スター・ウォーズ」"STAR WARS" のハン・ソロ (Han Solo)役だけではなく、リック・デッカード(Rick Deckard)役でも一層の気合いを吐いて欲しいものです。

この話は是非とも「ブレードランナー2」"Blade Runner 2" 公開後にお話しを続けさせて頂ければと思っています。

ところでユニコーンについて神話では、「好色」、「獰猛」とされており、まさにフォーチューン誌が適切に比喩した通りに投資家たちのターゲットになっていることがよく理解できるのですが、彼らの野望を叶えて美酒に酔えるか否かは、単にそれら外野からの期待度だけでは図りかねます。

しかも「スラック」"Slack" を追いかけるようにそのハードルを超えるべく幾つものフォローワーやオープンソースのソフトウェアまでが登場している状況になっているのです。

現実にそれらサービスが本当に使いやすく、しかも何らかの惹きつける魅力があってユーザに好意的に受け入れられるだけの力量を有しているのかが、直に見極める判断基準であるべきです。その点を確かめるべく、実際に「スラック」"Slack" を少し触ってみました。神話の通りであれば、ユニコーンには毒で汚された水を浄化する力があるそうですので、それを試みたのです。

ここで書けるのは直観としての素直な感想にしか過ぎないのですが、ユーザを選ばず広く使われるような魅力を持っているのに加えて現時点に於いても潜在的実力として期待を適えるのに達しているのではと感じました。

利用者としての導入部分は「コラボレーションツール」ということで、チャットツールがメインになるのでしょうが、その使い勝手はスムースさがあり、またカラフルで受け入れやすいデザインであることが魅力的です。「スラック」"Slack" をエンジニア向けとかプログラマ向けとカテゴリされる場合もあるのでしょうが、実際に触ってみると万人が使いやすいツールであることが分かります。寧ろエンジニアではない事務職などの連絡確認が頻繁に必要な方々にこそ必要なツールでしょうし、"LINE" などを日常で多用しているいまどきの方々には何の抵抗もなくご利用になれるのは間違いないです。
また"Slack"にはチャンネル(Channels)と呼称される会議室のようにメンバーを振り分けることが出来る便利なチャットだけに止まらず、ボット(slackbot)機能が用意されていることやファイル共有などの頻繁に使用する機能も充実しておりまして、まさにコミュニケーションに長けたツールであります。グループウェアの代替えにもなり得る可能性があります。

更には、マルチプラットフォーム(Windows, Mac OS X, Android, iPhone)でネイティブ・クライアントが用意されているのでどこでも快適に使えることに加えて、名立たる著名なサービスとして君臨するTwitter, Dropbox, Google Driveを筆頭にStripe, Envoy, Growbot, Hubot といった多種多様なサービス、そして開発系でもBitbucket, Subversion, Github, Heroku, Amazon SQSに至る七十種類以上に及ぶ有力な外部サービスとの連携が容易できる機能はただただ魅了されるばかりです。わざわざSkype + IRCに戻る必要もない上にHipchatやChatworksなどの著名なチャットツールよりも便利ですし、SlackからHubotなどのボットを使うことまでできます。

メールよりも良いと仰る方の話も納得できるものです。ポケベルが無くなってセルラーフォン(携帯電話)で連絡を取り合うようになったように、近い将来は電子メールで面倒なやり取りをするのではなく、チャットで業務を行うようにもなるのかもしれません。未来はすぐそこにあります。

ところで未来都市で繰り広げられる「ブレードランナー」"Blade Runner" の魅力は世界観やアクションも然る事乍ら(さることながら)、登場人物の会話がとても印象的で惹き込まれます。デッカードがレプリカントのレオン・コワルスキー "Leon Kowalski" に捕まってしまった劇中のシーンでこんな会話がありました。

Leon: "My birthday is April 10, 2017. How long do I live?"
Deckard: "Four years."

この台詞で思い出したことがあります。

確か、一年位前くらいだったかと思います。
車椅子に乗った奥さんとそれを押す旦那さんという仲の良さそうなご夫婦を近所の大型スーパーマーケット(イトーヨーカドー)で見かけたのはその頃だったと朧気(おぼろげ)に記憶しています。

奥さんはきちんと身なりを整えて車椅子に座っており、それを旦那さんが後ろから優しく押して二人で買い物を楽しんでいる様子に見えました。何の怪我なのかまたはご病気なのかを知る由もなく、奥さんが車椅子で来られている理由も存じませんが、ご夫婦で買い物の水入らずのひと時を楽しんでおられるのは傍からも伝わってきます。

それから数か月経ったある日に、同じスーパーであのご夫婦がいらっしゃるのをお見かけしました。
遠くから見える光景には、車椅子に乗った奥さんが泣いているご様子が見えました。
自動ドアを入ったスーパーの入り口で人目を憚らず泣いており、眼から大粒の涙が零れ落ちているのも見えました。
旦那さんが車椅子の奥さんに向き合って身を乗り出して何かをお話されていて、一所懸命に説得している様子でした。

その様子が遠巻きに見えてしまったので、もしかすると(これはただの憶測なのですが)、奥さんが公の場所に出てくるのを嫌がったのかもしれません。それを何らかの意図があるのでしょうが旦那さんが無理に連れてきたのではないのだろうか?と勝手に物語を創ってしまいました。

他人の私が勝手に妄想したことを恥ずかしく思い、それも起因して盗み聞きしている訳ではないのですがご夫婦の会話を聴いてはいけない様な気がして、咄嗟にカナル型イアフォンを耳に突っ込み携帯音楽プレーヤーの音量を無意識にあげました。
大音量が耳から頭蓋骨に響く中、ご夫婦の傍らを邪魔しないようにそっと通り過ぎて出口に向かったのです。

そしてつい最近の事ですが、帰宅が遅くなったある日に閉店間際のスーパーに立ち寄った際に、ご夫婦をお見かけしました。
もしかすると、人目を避けて夜遅くにスーパーに来店するようになったのかもしれません。
奥さんはすっかりご様子が変わってしまい、寝間着のまま旦那さんが押す車椅子に座っていました。
奥さんは表情も無く、口をパクパク何度も開け閉めして少し苦しそうに喘いでいる様子に見えました。
車椅子を避ける様にして横を通り過ぎる時に、思わず目にたまった涙を零してしまいそうになりました。

奥様はご病気だったのでしょう。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病の病名が脳裏を過ります。
病名で検索すると「脳や末梢神経からの命令を筋肉に伝える運動ニューロン(運動神経細胞)が侵される病気」と出てきました。そして「極めて進行が速い」とも書かれていました。
緩やかに進行するというのは、真綿で首を絞めるように時に残酷さを増す要因にもなるのでしょうが、あまりに進行が速くては、当人もその周りの人も気持ちの整理を付ける間も無くその時を迎えてしまうことでしょう。

そして何より、大事な人と少しでも一緒に、その傍に居たいというのは人情です。
それに、どのくらい大事な人と一緒に居ることができるのかが分からないというのは、このご夫婦だけの話ではないのです。
誰もが皆そうなのですから、その一瞬一瞬を大切にしなければならないことを思い出す必要があるでしょう。

冒頭で紹介しましたサービス名と同名の「スラック」"S.L.A.C.K." (もしくは5lackとも表記) という日本のヒップホップのトラックメーカーがいます。
彼のリリックに良く登場する「テキトー(適当)」というキーワードがまさに「スラック」"S.L.A.C.K." つまり「ゆるい」という名前の由来なのかもしれません。

そのS.L.A.C.K.の3rdアルバム「我時想う愛」という作品があります。
唯物論になるのかもしれませんが、時間と空間の制約の中で重力に体躯に引き摺られながら過ごす日々であるこの日常の中で垣間見えてくる微弱な電波を見逃さず受信して、それにこそ愛を感じる瞬間を見逃さず、その感情を飾らない言葉で淡々と綴っています。

日々募る感情を大切に噛みしめて過ごしたいと、いつも想います。

次回もお楽しみに。

 


 

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