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Infrastructure as Code(IaC)とTerraform ── インフラのコードでの管理を理解する (CTC教育サービス) 2026年7月02日公開

「Infrastructure as Code」「Terraform」という言葉を聞いて、少し難しそう、エンジニア向けの話だと感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかしその本質は、「インフラを分かりやすい設計図として管理する」という、とてもシンプルな発想です。

本特集記事では、専門知識がなくてもイメージできるよう、IaCとTerraformの考え方を順を追って、わかりやすくご紹介します。

手作業によるインフラ管理が抱える課題

新たなインフラ構築やリリース作業を行う際、皆さんのチームではどのような手順で実施していますでしょうか。前回作成した手順書を参照しながら画面を操作し、順番に設定を入力していく。サーバーを10台追加するとなれば、同じ手順を10回繰り返す。担当者が変われば、微妙に設定が異なる環境が出来上がる。そして障害が発生したとき、「この設定をいつ・誰が変更したのか」が分からないという状況に直面する。

こうした「手作業によるインフラ管理の限界」は、チームの規模が拡大するほど、サービスの成長が速くなるほど、全体の足かせとなっていきます。本稿では、この課題に正面から向き合う考え方の「IaC(Infrastructure as Code)」と「Terraform(テラフォーム)」について解説します。

手作業での管理が積み重ねる7つの問題

インフラ(サーバーやネットワークなど、システムを動かすための基盤)を手作業で管理していると、次のような問題が少しずつ積み上がっていきます。

【手作業によるインフラ管理の7つの課題】

  • ①作業時間の増大 ──すべて手作業のため、構築のたびに相当な時間が必要になる
  • ②ヒューマンエラー ──手順の見落としや入力ミスが発生しやすい
  • ③知識の属人化 ──特定の担当者しか把握していない設定が生まれ、再現性が失われる
  • ④状況把握の困難 ──現在の設定の正確な状態は、実機を直接確認しなければわからない
  • ⑤復旧の困難化 ──障害発生時に復旧手順をその場で組み立てるため、時間がかかる
  • ⑥リリース速度の低下 ──新機能の展開に時間がかかり、デプロイが低頻度になる
  • ⑦開発者の待ち時間 ──インフラ担当者への依頼待ちにより、開発の手が止まる

一つひとつは小さな問題に見えますが、これらが重なるとチーム全体の開発や運用のスピードに深刻な影響を与えます。特に「③知識の属人化」と「④状況把握の困難」は、担当者が変わった途端に「このサーバーで何が動いているか誰も把握していない」という事態を招き、非常に大きな問題に発展していきます。こうした状況を根本から変える考え方が、IaC(Infrastructure as Code)です。

IaCとは何か ── 「設計図」を渡せば、ツールが構築する
「コード」は難しいものではない ── 「設計図」として捉えてみる

IaCとは、インフラの構成を「コード(プログラムのような書き方をしたテキストファイル)」として記述し、そのファイルをツールに渡して自動的にシステムを構築する手法です。

「コード」という言葉に身構える方もいらっしゃるかもしれません。しかしここでいうコードは「家の設計図」に近いものです。設計図には「どの部屋をどの広さで・どこに窓を設けるか」が書かれており、その図面を渡せば工務店が建ててくれます。IaCのコードも同様で、「どのようなサーバーを・どのような設定で・何台用意するか」を記述した設計図を渡せば、ツールが自動で構築してくれます。

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【IaCの動き方──3ステップで理解する】

  • ①作りたいインフラの情報を、テキストファイルに記述する
     (例:「このスペックのサーバーを1台、このネットワークに接続して用意してほしい」)
  • ②そのファイルをIaCのツールに渡す
  • ③ツールがクラウドに対して自動的にリクエストを送り、インフラを構築する
     手作業では「人が毎回手順を踏む」のに対し、IaCでは「設計図を渡せばツールが動く」。
     一度書いた設計図は何度でも使い回せるため、まったく同じ環境を何台でも再現できます。
IaC導入で変わる、7つの改善効果

先ほど挙げた7つの課題が、IaCの導入によってどのように解消されるのかを見ていきましょう。

  • ①作業時間の短縮 ── これまで10台のサーバーを用意するには10回同じ操作が必要でした。IaCの場合はコードに「10台」と記述してツールを実行するだけです。構築にかかる時間は、手作業と比較して大幅に短縮されます。
  • ②ヒューマンエラーの排除 ── コードに記述した通りに設定が行われ、行われる処理も事前に確認できるため手順の誤認や作業漏れが発生しづらくなります。「あの担当者のときだけ設定が微妙に異なる」といった問題が解消されます。
  • ③属人化と④透明性の問題を解消 ── インフラの構成がコードというテキストで残るため、設定内容を誰でも確認できます。特定の個人の頭の中にしかなかったブラックボックスが、チーム全員が参照できるドキュメントへと変わります。
  • ⑤障害復旧の迅速化 ── 問題が発生した際には、以前の正常な状態のコードに戻してツールを実行するだけで、正常な状態のシステムに戻すことができます。「あのとき何を変更したのか」を探し回る必要がなくなります。
  • ⑥リリース速度の向上と⑦開発者の自律性確保 ── コードでシステムを作れるため、テスト環境の構築をインフラ担当者に依頼する必要がなくなります。開発者自身がコードを実行して環境を用意できるため、待ち時間がゼロになり、すぐ作業に取り掛かることができます。また、テスト環境や本番環境の構築も簡単に行えるため、アプリケーションのリリースの速度や頻度も大幅に上がります。
Terraformとは何か──IaCを実践するための「設計図ツール」
①IaCの考え方と、それだけでは解決しきれない課題

IaCは「インフラをコードで記述して自動的にシステムを構築する手法」です。しかしこの考え方を実際に運用しようとすると、いくつかの課題に直面します。

【純粋なIaC導入で直面しうる課題】

  • 自動化によるリスクの拡散 ── コードに誤りがある場合、大規模な範囲に対して一瞬で誤った設定が適用されてしまう
  • 複数人での同時作業による競合 ── 同じインフラに対して同時に複数のメンバーがコードを適用すると、意図しないリソースの重複が発生する可能性がある
  • 現状とコードの乖離(構成ドリフト) ── ブラウザでアクセスするクラウドの管理画面からの直接変更などにより、コードの内容と実際の環境が徐々に食い違っていく
  • コードの定期的なメンテナンス ── クラウド側の仕様変更や機能廃止に対応するための継続的な更新が必要になる

これらは、IaCをどのツールで実施するかによって、大きく対処しやすさが変わります。Terraformは、こうした課題への解決策を標準機能として備えた、IaCの事実上の標準ツール(デファクトスタンダードなツール)です。

②Terraformが提供する3つの解決策

TerraformはHashiCorp社が開発したIaCツールです。HCL(HashiCorp Configuration Language)という宣言型の言語でインフラを記述し、「最終的にどういう状態であってほしいか」を定義するだけで、現在との差分を自動的に計算・適用します。

解決策1 ── 実行前のプレビューによるリスク管理(terraform plan)

Terraformには「terraform plan」というコマンドがあります。これは「実際に変更を適用する前に、何がどう変わるかをプレビューする」機能です。

工事を始める前に「新しい設計図を使用して改修すると、建物のこのパーツが変わります」と設計士から説明を受けるようなものです。意図しない変更が起きていないかを事前に確認できるため、本番環境への大きなミスを持ち込むリスクを大幅に低減できます。自動化による「リスクの拡散」という課題に、正面から対処する仕組みです。

解決策 2 ── 現在の状態を記録するステート管理(State)

Terraformには「ステート(State:状態記録)」と呼ばれる、現在の環境の状態を記録した管理簿があります。コードを変更すると、Terraformはこの管理簿と照合しながら「理想の状態」との差分だけを自動で計算し、変わった部分のみを更新します。

建物全体を壊して建て直すのではなく、「変更が指示された場所だけ変える」という工事を的確に行うイメージです。この仕組みにより、管理画面から直接変更されたリソースも検知でき、「コードと実際の環境の乖離(構成ドリフト)」を是正できます。

解決策 3 ── 複数人開発を支える排他制御(Lock機能)

複数のメンバーが同時に同じインフラに対してコードを適用しようとした場合、Terraformのロック機能が働き、同時実行を防止します。これにより、意図しないリソースの重複作成や設定の上書きが発生しにくくなります。

Terraformコードのイメージ

参考として、Terraformのコードが実際にどのような見た目かを示します。読み解けなくても問題ありません。英単語の意味から「何を宣言しているか」の雰囲気だけ感じてみてください。


# 「AWS にウェブサーバーを 1 台用意してほしい」という設計図の例

resource "aws_instance" "web_server" { ami = "ami-0abcdef1234567890" # サーバーの OS テンプレートを指定 instance_type = "t3.micro" # サーバーの性能(サイズ)を指定
tags = { Name = "本番用 Web サーバー" # 識別用のラベルをつける } }

このコードは「AWS上に、指定したOSテンプレート(サーバイメージ)と性能で本番用Webサーバーという名のサーバーを1台作成してください」という設計図です。resource(用意するもの)、ami(OSテンプレート(サーバイメージ))、instance_type(性能)といった英単語から、何をどう定義しているか伝わるかと思います。Terraformのコードは、このように「最終的にどういう状態であってほしいか」を宣言するスタイルで記述します。これを宣言型(Declarative)と呼びます。

まとめ ── 「設計図」が整えば、チーム全体の仕事が前に進む

IaCとTerraformは、インフラ担当者だけのための技術ではありません。「誰が構築しても同じ環境が再現できる」「変更前に影響範囲を確認できる」「障害があればコードを戻すだけで復旧できる」── これらはチーム全体の生産性、安心感、そしてサービスの信頼性に直結します。

手作業の時代、インフラは「特定の担当者しか触れられない領域」でした。IaCによって、インフラは「チーム全員が読み書きできる設計図」へと変わります。その変化は、開発のスピードだけでなく、チームの文化そのものを変えていきます。

難しそうと感じた方も、まずは「インフラを設計図で管理する」という考え方を概念として持っていただき、もし「メリットを多く受けられそうなので、実際に自分のプロジェクトでどこから始めてみようか」という状況になれば、必要なリソースを作るためのTerraformのコードを数行書き、実際にシステムを構築する体験をしていただくことをお勧めします。その際、まずは公式ドキュメントやWeb上の情報をもとに、検証環境で実際に手を動かしてみることが理解を深める最短経路です。また、より体系的に実務に直結した形で習得したいという場合には、ハンズオン形式のトレーニングコースを活用するという選択肢もございます。どのような形であれ、一歩を踏み出すことが何より大切です。本コラムが皆さまの業務に少しでも役立つきっかけとなれば幸いです。

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