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第10回 プログラミング教育の必修化を考える (辻真吾) 2019年2月

はじめに

 大きめの本屋さんで、もともと興味のあるコンピュータや理工書だけではなく、いろいろな分野の売り場を見て回るのは楽しいものです。先日、とある本屋さんで間違えないプログラミング教育(総合教育技術11月号増刊・小学館)という雑誌を見つけて、思わず購入してみました。私は小学校の先生ではないですし、プログラミングはそれなりに得意だと思っているので、何の目的で買ったのかと言われると答えに窮するところです。ただ、この雑誌に目を通すうちに、プログラミング教育の必修化がもたらす影響について考えてみたくなりました。そこで今回は、そのお話をしたいと思います。

プログラミング教育必修化とは?

 2020年から、小学校の5,6年生の学習指導要領にプログラミングが盛り込まれます。これだけ聞くと、いきなりPythonとかC言語などをやるのか?と思ってしまいそうですが、そうではありません。具体的な内容はまだ議論の予定があるようですが、プログラミングのための論理的思考を育てるというのが大きな目的のようです。また、国語、算数、理科、社会、プログラミングというわけではなく、算数と理科の中でプログラミングを扱うという形式です。具体的には、算数で三角形や六角形をプログラムで描いてみるという課題や、理科で人感センサー付きの電球をプログラムでシミュレートするといった具合です。簡単な図形の作図は、拙著「Pythonスタートブック」でも扱った内容で、これはもともと1967年に開発されたと言われる教育用言語LOGOの影響をうけています。もう30年以上も前の話になりますが、筆者も小学生の頃、父親に買ってもらった三菱電機のMSX2でLOGOを使って遊んだ覚えがあります。理科の人感センサーをシミュレートする内容は、人が5メートル以内に近付いたらON、離れたらOFFのようなプログラムと、実際のデバイスが連動すると子供たちには楽しいかもしれません。Raspberry Piなどの小型コンピュータは安いですので、先進国の名に恥じないように、この程度の教育投資は迷わずして欲しいものです。

必修化の功罪

 現代社会は、ほとんどすべてのことがコンピュータとそのネットワークに支えられているので、その仕組みを学校で教えることは当然だと思われます。むしろ遅すぎたと言うべきでしょうか。ただ、その一方で画一化された教育になってしまうことには、議論すべき点も多いでしょう。先に紹介した雑誌の巻頭に、Rubyの開発者として著名な、まつもとゆきひろさんが「嫌いにならないプログラミング体験をすべての子どもたちに」と題する評論を寄稿しています。そのなかで、プログラミングは体験することが大事だとおっしゃっていて、私もそう思うのですが、学校で教えるからにはテストをして点数を付ける必要があるでしょう。そうなると、無理矢理やらされる感じが出て、嫌いになってしまう子もいるかもしれません。ただ、この点については私はそれでも良いと思っています。数学を考えてみましょう。ほとんどの人にとって、日常生活で使う数学と言えば、簡単な算術計算までです。三角関数の加法定理など社会に出てから使ったことがない!と発言して橋下徹さんがちょっと炎上していたのは最近の話ですが、まあ仰る通りという一面もあります。それでも、中学校や高校で習う数学は相当高度なものが含まれます。それが原因で、多くの数学嫌いを量産しているのは事実でしょう。ここでは教育を根底から変えるという議論をするつもりはないので、プログラミングが必修化されれば、嫌いになる生徒が多く出るのは当然でしょう。それでも、私は今回のプログラミング教育必修化には、意味があると考えています。

偉い人になったとき

 国や地方時自体、大企業など大きな組織の運営は、偉い人が鍵を握っています。「偉い人」とはなんとも稚拙な表現ですが、ここでは現場の仕事はせず、現場からの意見を聞いて全体の方針を決める人を偉い人としましょう。世の中はお金がないと何もできないので、予算編成は重要です。国から企業に至るまで「何にどれくらいのお金を使うか」を決めることが、その後の流れを決めるといっても過言ではないでしょう。この時、ITインフラにいくらかかるのか、データサイエンスの作業にどれくらいの労力が必要なのか、偉い人が把握していないと悲惨です。実際、このような問題は現代社会の至るところで起きているように感じますが、プログラミング教育の必修化がこれを緩和してくれるのではないか、と私は思っています。何を悠長な話をしているんだ、IT人材枯渇は喫緊の課題だぞ!とお叱りを受けそうですが、すくなくともプログラミングが話題の遡上にあがることは嬉しいことです。そういう意味では、小学校のプログラミング教育は、いつも親しんでいるYouTubeのサイトが、どれくらいの量のコードで動いているか、その膨大な分量と緻密さを子供達に思い知らせるだけでも価値があるかもしれません。

まとめ

 今回は、プログラミング教育必修化について考えてみました。賛否両論あるとは思いますが、個人的には賛成です。私も昔は学校の国語で習う文学が大っ嫌いでした。こんな感情的に書かれた文章を読み解く意味がわからないと思っていましたが、20代30代と歳を重ねるにつれて、その意味がわかるようになってきました。プログラミングと文学は違いますが、「訳の分からないもの」だということを教えることにも意味があると思います。現場の先生方の負担は増えそうですが、ぜひ次の世代を支える冴えた偉い人を育成してほしいと願います。

 


 

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まったくのゼロからでも大丈夫

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