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第11回 STEM教育とプログラミング (辻真吾) 2019年6月

はじめに

 「いつまでもあると思うな親と金」とはよく言いますが、この言葉が誰かに頼らず独立心を持って生きなさいという意味だとすると、変化の激しい現代ではなかなか厳しい言葉として受け取れます。とくにテクノロジーの分野ではさまざまなことが起こりますが、こうした領域に関する知識はSTEMと呼ばれています。今回はこのSTEMとその教育について考えてみたいと思います。

STEMとは?

 STEMとは、Science、Technology、Engineering and Mathematicsのことで、科学、技術、工学、数学を意味する造語です。STEM教育重視の流れは、2000年ごろの米国で誕生したというのが定説のようです。近代社会の発展は、新たな科学的発見とそれを実社会へ応用するための技術開発や工学的な努力によって進歩を続けてきました。数学は、科学、技術、工学を下から力強く支え確固たる論理的な枠組みを与えてくれます。自動車や飛行機、巨大な発電所と送電網、すべてのモノがネットに接続されつつある情報通信技術の発展など、現代ではSTEM分野とまったく無縁で生活するのはほとんど不可能に思えます。STEM教育ばかりを重視して文学や歴史を教えなくてよいのか!というご意見もありそうですが、そのことも含め、ここでは先に進んでSTEM教育が目指すべき姿を考えてみたいと思います。

STEM教育が目指すべきもの

 STEM教育を通じて何を目指すべきなのでしょうか?もちろん、教育を受けるすべての人がSTEM領域に興味を持ち、深い知識を身につけられればそれは目指すべき理想の姿でしょう。しかし、人それぞれ興味や関心は違います。科学や技術よりも、人間同士の感情が織りなす歴史や文学に惹かれる人もいます。そのような人々に無理矢理「現代の公開鍵暗号は、高度な数論に支えられている。フェルマーの小定理やオイラーの公式といった数学は必ず身につけるべきだ」と言っても、おそらくまったく心に響かないでしょう。実際、そんな数学をしらなくてもHTTPSを使えばネットで安全に買い物ができるので、まったく問題ありません。

 私はSTEM領域の知識をゴリ押しするのではなく、数理的に興味深い題材を使ってプログラムを作る能力、つまりコーディングのスキル育成に注力するのが良いのではないかと思っています。いまやプログラミングのスキルはほとんどすべての人の役に立つと言えます。コンピュータとそのネットワークがここまで広がると、仕事や研究のために必要な資料のほとんどをネットワークから引き出すことが可能です。こうして集めた資料が膨大になったとき、これらを整形してデータベースに保存できれば、そのあとの仕事の効率がかなり変わって来ます。STEMとプログラミングは興味の分野として近いところにありますが、STEM分野に興味が持てないからプログラミングも自分とは関係ないと思ってしまうのは、あまりにも勿体ありません。

STEMとプログラミングの両輪

 また逆の見方をすると、STEM教育にはプログラミングが非常に役立ちます。数学の定理や物理の理論は、言葉だけで学んでいると具体的なイメージが掴めず、嫌になることも多いでしょう。そんな時、コンピュータを使って具体的な計算やシミュレーションを行うことで、一気に理解度が高まる可能性はあります。この両輪をうまく回せると良いのではないでしょうか?STEM領域の知識の理解のために、プログラミングのスキルを高め、高まったスキルでさらに高度な数理的思考を醸成するサイクルを確立するのです。将来的には、身につけた数学や工学の知識は直接使わなくなるかも知れませんが、プログラミングのスキルは多くの人にとって役に立ち続けると思われます。現在、小学校から高校まで、STEM教育充実のためのカリキュラム策定が行われいるようですが、現場の先生達の努力でSTEMとプログラミングの両輪がうまくまわることを願っています。

まとめ

 今回は、STEM教育とプログラミングについて考えてみました。コンピュータの助けを借りると、わかりにくい数学や物理の概念を短時間で理解出来るようになります。またそれだけではなく、大規模な自然言語データを処理することで文学作品のクラスタリングをするなど、STEM領域ではない教育分野でも新しい試みができそうです。STEMだけに偏るのではなく、テクノロジーを使ってバランスのとれた新時代の教育方法を模索していくことが重要だと思います。

 


 

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