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第90回 イングランド・ロスト (藤江一博) 2019年9月

今回は、サッカーの試合でイングランドを見に行って「負けた」ということで始まった話が、いつの間にかイングランドが「迷子」になっていたという物語についてです。

この物語が伝えているのは、叱責というよりも「何をやっているんだ」と呆れ果てている様子です。

「負けた」から「迷子」になって、仕舞には「なくなった」になるのですから。

 
 
 

『イングランド・ロスト』:

負けだ、負けだ、負けだ、負けだ。

イングランド戦を見に行った。でも、負けちまった。
イングランド戦を見に行った。でも、負けちまった。

負けだ、負けだ、負けだ。来たくなんかなかったのに。

イングランドを見に行った。でも、負けちまった。
イングランドを見に行った。でも、負けちまった。

俺は、イングランドを見に行った。
俺は、見に行った。
俺は、行った。
俺は、

入ることもできないし、出ることもできない。
たぶん、それが本当のところなんだろう。

イングランドを探しに行った。でも、
イングランドを探しに行った。でも、
イングランドを探しに行った。でも、
イングランドはなくなっていたんだ。

 
 
 

『ブレグジット』:

紹介している楽曲は、二〇一七年に「ミック・ジャガー」"Mick Jagger" が唐突にリリースしたシングル 「イングランド・ロスト」"England Lost" です。

「イングランド・ロスト」"England Lost" に加えて、もう一曲「ガッタ・ゲット・ア・グリップ」"Gotta Get a Grip" が「両A面シングル」"double A-side single" で音楽配信にて同時リリースされています。

言わずもがな「ミック・ジャガー」"Mick Jagger" は「ザ・ローリング・ストーンズ」"The Rolling Stones" のフロントマンですが、ソロとしては十年ぶりのリリースになります。

このいきなりのシングル・リリースについての背景ですが、
「イングランド・ロスト」"England Lost" は、二〇一七年リリース。
「ブレグジット」"Brexit" は、二〇一六年に国民投票が行われました。
「ブレグジット」"Brexit" は、"British" + "Exit" のかばん語で、つまり「イギリスの欧州連合離脱」の事です。
「ブレグジット」"Brexit" は、二〇一九年現在に至るまで混沌を極めています。

国民投票から三年が経った今でもイギリスでは、何かと云えば「ブレグジット」"Brexit" 。
皆が皆「ブレグジット」"Brexit" の話しかしていないそうです。

イギリスの現状を嘆くかのように「何やっているんだ」或いは、「その話題はうんざりだ」という意味のミックなりの主張だと受け取れます。
たぶん、ミックが投票の翌年頃イギリスに戻った時に感じたことなのだろうと思いますが、三年経った現在も相変わらずみたいです。

その感情をストレートに楽曲にしたのが「イングランド・ロスト」"England Lost"。
この楽曲後半にはラップが入っており「スケプタ」"Skepta" というラッパーがリリックを伝えているのですが、これは筆者的にですが正直あまりイケていません。
でも、プロモーション・ビデオは二曲とも良く出来ているので是非見て下さい。
映像が楽曲を演出してくれて何を言いたいのかがよくわかります。

「ブレグジット」"Brexit" は二〇一九年現在進行形で回答期限が迫る中、「合意なき離脱」"No Deal Brexit" を含めた最悪のシナリオになることもあり得る状況で、これからどうなるかは分からないといった混迷が続いています。

本当にどうなるのでしょうか。

これからもっと悪くなっていくことが分かっているのに、
大事なことが目の前に見えているのに見ようとしない、
間違った方向に舵を切る、
何にも正しいことを決められない、
誰も責任を取らない。

どっかの島国と同じです。

寧ろ、不正直な分だけ極東の島国の方が深刻です。

到底、他人事とは思えません。

「よくもそんなことを」"How dare you !"

国連サミットで涙ながらに連呼したグレタさんは正直な人です。
真っ正直な「グレタ・トゥーンベリ」"Greta Thunberg" さんがお怒りなのは、当然だと思います。

いつでもどこでも、深刻な事態を招いているのは権力者が問題を問題として正視しない不正直さです。

 
 
 

『ガッタ・ゲット・ア・グリップ』:

「ミック・ジャガー」"Mick Jagger" が音楽配信で「イングランド・ロスト」"England Lost" をリリースしたのは、知っていました。確かリリースされてすぐに購入して一回位は聴いたと思いますが、印象にはあまり残っていませんでした。

同時期(二〇一六年末)にリリースされた「ザ・ローリング・ストーンズ」"The Rolling Stones" の久々のアルバム「ブルー・アンド・ロンサム」"Blue & Lonesome" の存在があったからだと思います。

「ブルー・アンド・ロンサム」"Blue & Lonesome" はストーンズとして初めての全編がカバー・ソングで占められたアルバムです(初期のストーンズが演奏する楽曲は、もちろんカバー・ソングが主体でした)。
このカバー・アルバムは往年の古典的なブルース曲で構成されていてストーンズの原点回帰とも云える代物だったからです。
渋くてカッコイイですし、彼らのルーツが垣間見えるのも面白いです。そちらを聴いていた所為で見逃していたのかもしれません。

改めて掘り起こした「イングランド・ロスト」"England Lost" ですが、その理由は「ピーター・バラカン」"Peter Barakan" が、「イングランド・ロスト」"England Lost" をテレビで紹介したのです。そこでプロモーション・ビデオを観たのが掘り出したきっかけです。

ピーター・バラカンは、ミックが久々に面白いことをやっているなと「イングランド・ロスト」"England Lost" を紹介してくれました。

ピーターはこの曲を「言いたい人が、言える立場にいるなら、取り敢えず言っておいていいんじゃないか」と、評していました。
「たぶん、影響はないだろうけど」と付け加えていましたが、「良く出来たビデオ」と言って見せてくれたのです。
「イングランド・ロスト」"England Lost" のビデオを観て何となくミックの意図を垣間見ることが出来ました。
そこで、もう一度掘り起こすことにしたのです。

その楽曲を紹介してくれた音楽番組は「ベストヒットUSA」です。

 
 
 

『ベストヒットUSA』:

スネークマンショーでお馴染みの「小林克也」"Katsuya Kobayashi" さんが、司会を務めるテレビ音楽番組「ベストヒットUSA」です。

一九八一年から始まった「ベストヒットUSA」は、「ラジオ&レコーズ」"Radio & Records" のデータからアメリカのヒットチャートを紹介する音楽番組で毎週欠かさず見ていました。プロモーション・ビデオなどの映像を洋楽中心に何でも放送してくれる音楽少年には欠かせない情報源だったのです。

邦楽のビデオを流してくれるのは「ミュートマ(ミュージックトマト)JAPAN」でしたが、テレビ神奈川番組制作放送であったので当時は北海道では見ることが出来ませんでした。札幌にあった洒落たお店のBGV(バックグラウンドミュージック)で流しているのを眺める程度です。そういえばちょうど上京する前後の時期でしたので、東京で「ミュートマ」を観ることが出来た時は感動しました。

音楽番組は「MTV」(ミュージックテレビジョン)を筆頭に「ベストヒットUSA」、「ミュートマ」とたくさんありましたが、一九九〇年を迎える頃には徐々に姿を消していきました。
ですが「ベストヒットUSA」は場所を変えながら現在もテレビで放送続けています。
小林克也さんの声の良さと人徳が長寿番組足る理由に違いありません。
継続は力なりです。
毎週見ています。

そんな「ベストヒットUSA」の二〇一九年六月七日放送分で「ザ・ローリング・ストーンズ特集」がありました。ゲストは「ピーター・バラカン」"Peter Barakan"。

小林克也とピーター・バラカンが二人一緒で登場するのは初めてだそうです。
今回の番組企画がストーンズ特集だったので克也さんが誰をゲストにするのかは、ストーンズが原点だと言っていたピーターしかいないとゲストに呼んだと仰っていました。

 
 
 

『メイン・ストリートのならず者』:

ピーター・バラカンが紹介してくれた最も好きなアルバムは「メイン・ストリートのならず者」"Exile on Main St." でした。
一九七二年リリースされたアルバムで、最盛期のストーンズです。「ダイスをころがせ」"Tumbling Dice" が名曲だと紹介していました。

筆者といえば(時代なのですが)「メタル(ヘヴィメタル)」"Heavy Metal" を経て「ポストパンク」"Post-punk" に感化された筆者がストーンズで好きな楽曲といえば、真っ先にカバー曲が思いつきます。

「ダンソサ(ダンス・ソサエティー)」"The Danse Society" が、エレクトロニカに淫靡な雰囲気でダークにカバーした「2000光年のかなたに」"2000 Light Years From Home" は「スティーヴ・ロウリングス」"Steve Rawlings" の気怠くエコーが掛かった声と電子楽器のハーモニーが好きで最初に挙げることができます。

それに続くのは「エコバニ(エコー・アンド・ザ・バニーメン)」"Echo & the Bunnymen" が、カバーした「黒く塗れ!」"Paint It Black" が大好きです。「イアン・マッカロク」"Ian Stephen McCulloch" がギターのフレーズに合わせて一生懸命に時々適当に歌い上げるのですけど、どうしても気だるく聴こえるボーカルで唄います。
「黒く塗れ!」"Paint It Black" は、「RC(RCサクセション)」"RC SUCCESSION" も「カバーズ」"Covers" に収録していました。そういえば、「アンヴィル」"Anvil" も「黒く塗れ!」"Paint It Black" をファースト・アルバムでカバーしているのを思い出しました。

「ポストパンク」"Post-punk" の洗礼を受ける前に出会ったのは「キッス」"KISS" がカバーした「2000マン」"2000 Man" です。オリジナルを踏襲しつつアコースティックからハードに変容させて「エース・フレーリー」"Ace Frehley" のツボを押さえたギターソロがカッコよくて捨てがたいです。

別のミュージシャンがアレンジしてストーンズのカバー曲として脳内にインジェクションされた以外にも思い入れがある曲は、たくさんあります。
「スタート・ミー・アップ」"Start Me Up" や「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」"Undercover of the Night" 、それに「悪魔を憐れむ歌」"Sympathy For The Devil" も欠かせません。

数え上げればキリがありませんが、その中でも女々しく許しを請う「悲しみのアンジー」"Angie" も忘れずにしておきたいです。
「アンジー」"Angie" という名前を聴くと「アンジェリーナ・ジョリー」"Angelina Jolie" しか思い出さないのですけど。

 
 
 

『アメリカを探しに』:

「サイモン・アンド・ガーファンクル」"Simon & Garfunkel" の「アメリカ」"America" という楽曲があります(以前のコラム『第24回 アメリカを探しに』をご参照ください)。

サッカーの試合を見に行って筈だったのが「イングランドがなくなってしまった」という顛末は、「アメリカを探しに」歩き始めたつもりが、いつの間にか「空っぽ」になってしまって「僕は失われてしまった」のと同じ様に感じました。

「アメリカ」"America" では、
「アメリカを探しに」 "Look for America" と繰り返します。
「みんなアメリカを探しに来たんだ」"All come to look for America" と。

「イングランドは負けた」"England's lost"
「イングランドは迷子になった」"England's lost"
「イングランドは無くなっていた」"England's lost"

と連呼します。

「イングランド」"England" と「アメリカ」"America" が重なり合っているように思えてきます。
「ポール・サイモン」"Paul Simon" と 「ミック・ジャガー」"Mick Jagger" が時を経てシンクロしたのかのようです。

それに、取り敢えず言っておくことは大事かもしれません。
言わないと何を考えているのかは伝わらないのですから。

 
 
 

『ブックエンド』:

自戒を込めてではありますが、
何かに執着するのは良い事ばかりではありません。

時と場合、そして対象にも由りますが、
一つの事に固執すると、心が囚われてしまいます。

心だけは自由にしておきたいです。
いつでも翼を広げることが出来るように。

 
 
 

次回をお楽しみに。

 


 

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